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法定福利費とは?福利厚生費や法定外福利費とはどう違う?

法定福利費とは?福利厚生費や法定外福利費とはどう違う?

法定福利費の定義や福利厚生費との違い、法定外福利費との違い、法定福利費の内訳などについて解説します。法定福利費は基本的に義務なので損得ではなく加入せざるを得ないのですが、法定外福利費は使い方によって節税効果もあります。

法定福利費とは

法定福利費とは、従業員の福利厚生に関する費用のうち、会社が支払うことが義務付けられている費用のことです。つまり、従業員のために会社が支払う費用ということです。

法定福利費と福利厚生費との違い

福利厚生費とは、企業が従業員のために支払う、給与以外の費用のことです。法定福利費と福利厚生費の違いは、福利厚生費の中で会社に義務付けられているものが法定福利費です。

つまり、法定福利費は福利厚生費の一部ということになります。同じ項目が福利厚生費と呼ばれたり法定福利費と呼ばれたりするのはそのためです。福利厚生費、法定福利費の具体的な項目については後述します。

法定福利費と法定外福利費との違い

法定外福利費とは、会社に法的に義務付けられたものではなく、会社が独自に行う福利厚生のことです。法定外福利費=福利厚生費と説明される場合もあります。法定外福利費の項目にどのようなものがあるかは、後ほどご紹介します。

法定福利費の内訳

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法定福利費にはどのような項目があるのか、具体的に紹介していきます。

法定福利費:健康保険料

従業員のための健康保険料は、一部会社が支払う必要があります。また正社員だけでなく、パートタイマーも対象になります。具体的な条件は、「2カ月超の雇用見込み」「週所定労働時間が正社員の4分の3以上」「1カ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上」「週30時間以上の労働時間」となっています。

従業員が75歳以上の場合は後期高齢者医療保険に加入するので、健康保険の対象は75歳未満が対象です。

法定福利費:介護保険料

介護保険は40歳以上になると誰もが加入しなければならないものです。高齢者やその家族の介護費用の一部を社会全体で支える制度になっています。

65歳以上は第1号被保険者、40歳~64歳は第2号被保険者です。40歳の誕生月の前月から介護保険料の支払いが始まり、介護保険料の一部は会社が負担します。

法定福利費:厚生年金保険料

厚生年金保険料とは、一定年齢に達した受給世代の人に給付するために、現役世代から集めているお金です。厚生年金保険料は、従業員と会社が半分ずつ負担します。

厚生年金は会社員と公務員が加入するもので、たとえば会社や公務員を退職すると、国民年金に加入することになります。ちなみに、公務員の加入する年金はもともと共済年金でしたが、現在は厚生年金に統一されています。

法定福利費:労災保険料

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労災保険料は、従業員が仕事中に怪我や病気をした場合に、治療費などを負担するための保険料です。また正社員だけでなく、パートやアルバイトも含まれます。

労災の対象となるのは、仕事中の業務災害と通勤途中の通勤災害です。業務災害とは、業務上発生する怪我や病気です。つまり、たとえば業務中に持病で倒れた、といった場合労災の対象にはなりません。

業務時間中であることだけでなく業務上であることも条件に含まれています。次に通勤災害は家と会社の間の通勤中に発生する怪我などに対する保険です。

ただし通勤とは関係ない行為をした場合は通勤災害の対象から外れます。労災保険では治療費はもちろん、休業期間中の補償なども支給されます。

法定福利費:雇用保険

雇用保険は従業員が何らかの理由で退職した場合に生活費等を補助し、再就職を支援するための制度です。退職した従業員本人が、ハローワークなどに申請することで支給されます。

雇用保険は従業員が雇用から外れたときの保険なので、企業側にとって加入するメリットがないように思えます。これはその通りで、企業にとっては何のメリットもありません。

しかし残念ながら義務付けられているものなので、加入しなければなりません。

法定福利費:子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)

もともとは児童手当拠出金という名称でしたが、子ども・子育て拠出金という名称に変更されました。会社によって呼び方が異なったりサイトなどでもどちらかの名称で解説されていますが、同じものということにご注意ください。

子ども・子育て拠出金とは、仕事と子育ての両立等を支援するために支払われる税金です。特に会社で何か子育て支援を行っているわけではなくても、子ども・子育て拠出金の支払いは義務付けられています。

具体的には、厚生年金に加入する従業員がいる場合、子ども・子育て拠出金を支払う義務があります。また子ども・子育て拠出金は特定の従業員に対して支給するためのお金ではありません。

用途としては、放課後の児童クラブ、病児保育およびその設備等、延長保育事業、親子の交流促進事業、育児相談、妊婦健診、乳児のいる家庭訪問、企業における保育事業やベビーシッター利用者支援へのサポートなどです。

法定福利費の負担割合

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上で紹介した法定福利費は、税金と会社と被保険者本人で分散して負担しています。保険ごとに負担割合が異なるのですが、会社と被保険者本人の負担割合は、半々、会社が被保険者本人の2倍、被保険者本人の負担はなし、といった具合になっています。では具体的な数字をご紹介します。

まず健康保険、介護保険、厚生年金保険は会社と被保険者本人の負担は半々です。とはいえほとんどは税金で賄われているため、健康保険は4.935%ずつ、介護保険は0.895%ずつ、厚生年金保険は9.15%ずつとなっています。

会社と被保険者本人がそれぞれ上記の割合ずつ負担して、残りはすべて税金ということです。雇用保険は会社が0.6%の負担、従業員が0.3%の負担です。つまり会社は従業員の2倍の負担額ということです。雇用保険は会社をやめた人のための制度なので加入したくないかもしれませんが、義務付けられているものなので加入せざるを得ません。

児童手当と労災保険に関しては、会社と国の負担のみで、従業員本人の負担分はありません。負担割合としては、児童手当の会社負担が0.34%、労災保険は0.3%となっています。

法定外福利費の概要と内訳

次に法定外福利費の内訳です。一応再確認しておくと、法定外福利費は福利厚生費の中で、法定福利費に該当しないもの、つまり企業に義務付けられていない福利費です。

法定外福利費は企業が従業員の福利厚生を充実させるため独自に設けているものになります。そのため法定外福利費の詳細は企業によって異なるのですが、ここではよくある法定外福利費を例としてご紹介します。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 食事補助
  • 健康診断料
  • 社員旅行、忘年会、新年会などの費用
  • 慶弔見舞いの費用
  • 制服費用など

法定外福利費として認められる条件やメリットについて詳しくは後述しますが、イメージとして、上記のものは会社の経費としても問題なさそうな感じがするかと思います。

法定外福利費のメリット

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法定外福利費は従業員の福利厚生を独自に充実させ、従業員のモチベーションアップにつながるというメリットがあります。しかし、メリットはそれだけではありません。

まず法定福利費は非課税なのですが、法定外福利費も一定条件を満たすと非課税になります。とはいえ無条件に非課税を認めると脱税の温床となるため、条件があるのです。具体的には、以下のような条件が定められています。

  • 福利厚生の目的に沿う内容である
  • 従業員全員を対象としている
  • 福利厚生として常識の範囲内の内容、及び妥当な金額
  • 税務規定の範囲内の支出である

曖昧な部分も多いのですが、特に福利厚生の目的に沿っていることと、従業員全員が対象であることは重要です。なぜなら、たとえば役員が法定外福利費として私用に経費を使い、脱税するケースがあるからです。

このようなことを防ぐために、目的と、対象が従業員全員であるかどうかは厳しく見られます。たとえば、昔よくあったのは接待ゴルフを法定外福利費の対象にすることです。

今の時代法定外福利費の非課税の判定も厳しくなっているため、従業員全員が参加するようなイベントでないと非課税対象にするのは難しいと考えるべきでしょう。

法定福利費は義務

会社から見ると法定福利費は義務で、支払わざるを得ないということでした。何かあった際に従業員を税金で守ってもらうための費用とも言えるでしょう。そのため法定福利費については選択の余地がなく、節税や従業員のモチベーションアップに役立つのは法定外福利費の方です。 そして法定福利費と法定外福利費を合わせて福利厚生費と呼びます。

企業の教科書
村宮 淳子
記事の監修者 村宮 淳子
社会保険労務士法人 きわみ事務所 所属社会保険労務士

2021年5月に登録したばかりの新人社労士です。
弁護士としては、就業規則作成を中心に、労働法分野に携わってきました。
また、大学ではこれから社会へ出ていく学生達に向けて、労働法に関する講義をしています。
今後は、社会保険労務士の専門分野である労働法、社会保険関係手続等や企業の労務管理について研鑽を深めるとともに、企業の担当者が気軽に相談できる社労士を目指したいと思います。

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