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管理職に残業代は不要?支払わないのは違法?条件を徹底解説!

管理職に残業代は不要?支払わないのは違法?条件を徹底解説!

日本の企業には多くの場合、管理職が置かれています。しかし、管理職は責任ばかりで待遇も良くない、残業代も支払われない、といった意見をよく耳にします。

そもそも管理職とはどのようなものなのか、残業代を支払うべきなのか、実例としてどのようなものがあるのか、などについて解説していきます。

管理職には残業代が支払われないことが多い

実態としては、管理職には残業代が支払われないことが多いです。これは周知の事実でしょう。では管理職に残業代を支払う必要はないのかというと、ケースバイケースです。

どのような場合には管理職に残業代を支払う必要があり、逆にどのような場合は管理職に残業代を支払う必要はないのか、解説していきます。

管理職に残業代が支払われないのは違法?

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名ばかり管理職の実態を考えると、管理職に残業代が支払われないのは違法なことのように思えます。しかし、管理職に残業代が支払われないこと自体は違法ではありません。

基本的に管理職には残業代がないものなので、会社側の「管理職だから残業代は出ない」という主張自体は間違ったものではないということです。

ただし、深夜業(午後10時~午前5時)に関しては、管理職であっても残業代が支払われなければなりません。管理職に該当するかどうかの基準は後述しますが、深夜業に関しては管理職に該当するかどうかに関わらず、残業代が支払われていないことは違法になります。

管理職の残業代を支払うかどうかのポイントとは?

では名ばかり管理職も違法ではないのか?と思われるでしょう。名ばかり管理職については、違法である可能性もあります。

つまり管理職の残業代が支払われないこと自体は違法ではないのですが、管理職に該当していないにも関わらず残業代を支払わないことに違法性が認められる可能性があるということです。

管理職の条件とは

管理職に残業代が支払われないこと自体は問題ないのですが、管理職に該当しないにも関わらず、都合よく残業代を支払わないことは問題です。ここで重要なのは、管理職に該当するかどうかの判断です。

そして管理職に該当するかどうかの条件は以下になります。

  • 経営に関する権限を持っている
  • 出退勤に裁量が認められている
  • 管理職としてふさわしい待遇を受けている

管理職に該当するかどうかの条件は以上のようになっています。労働基準法では、「管理監督者」と呼ばれています。この管理監督者に該当すれば残業代が支払われなくても問題ありませんが、管理監督者に該当しない場合、残業代が支払われないことは違法の可能性があります。

まず経営に関する権限とは、たとえば現場の指揮だけでなく、会社の方向性や戦略にも提言できる権限を意味します。単に現場を任されているというだけでは、経営に関する権限を持っているとは言えません。

次に出退勤の裁量とは、勤務時間を縛られていないということです。社員からの印象もあるので基本的には経営者も同じ時間に出勤しているケースが多いかと思いますが、状況に応じて出社しないこともあるでしょう。

完全に勤務時間で縛られている状況であれば、管理監督者とは言えません。最後に待遇については、少なくとも一般の社員よりは給与が高い必要があります。

管理職に就いたにも関わらず収入が変わっていない、むしろ残業代が減った分収入が減っている、という状況であれば、管理監督者には該当していません。

管理職の基準は曖昧な部分も多い

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以上のような基準で管理監督者に該当するかどうかが判断されるのですが、基準としては曖昧な部分が多いです。企業によって状況が異なるため労働基準法で明確に定義づけることが難しく、最終的には企業ごとに個別に判断する必要があります。

ただし明らかに管理監督者に該当しないにも関わらず、管理職だからという理由で残業代が支給されていないケースは多々あります。

残業代を払いたくない?会社はなぜ管理職を置くのか

管理職の残業代が問題になるケースがありますが、そもそもなぜ会社は管理職を置くのでしょうか。

管理職を置く理由:責任感を持ってモチベーションを上げてほしいから

仕事により責任を持って取り組んでもらうために、管理職を置くことが多いです。管理職に登用されたことで本人のモチベーションアップに役立ちますが、実際に他の社員を管理することで業務が円滑になります。

最近は組織がフラットになっていますが、それでも管理者は必要です。管理職を置くことで本人や周囲のモチベーションがアップすると同時に、組織としての統一感も生まれます。

管理職を置く理由:残業代を払いたくないから

管理職を置くことは会社を成長させるためにも有効ですが、単に残業代を支払いたくないから管理職を置いているケースもあります。管理者としての責任と業務量だけが増えて、待遇はむしろ悪くなった、というケースも多いです。

管理職の残業代を請求する期限は2年

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管理職の実態が名ばかり管理職であれば、従業員側には残業代を請求する権利があります。上でご説明した通り管理監督者の定義自体が曖昧なので判断が難しいのですが、明らかに管理監督者に該当しないケースも少なくはありません。

明らかに管理監督者に該当しないのに残業代が支払われていない場合、従業員には残業代を請求する権利があります。弁護士に相談され、会社に対して訴えを起こされる可能性もあります。

従業員は残業時間の証拠を残している可能性がある

従業員は残業代を後から請求するために残業時間の証拠を残しているかもしれません。具体的には、出勤表、雇用契約書、給与明細などです。これらの証拠を元に後から残業代を請求される可能性があります。

管理職の残業代請求は会社に交渉する可能性が高い

従業員は、管理監督者ではないのに残業代が支払われていない場合、残業代を請求する権利があるということでした。しかし、従業員の立場上会社に対して法的に残業代を請求することは難しい場合が多いでしょう。

会社を訴えれば残業代は回収できるかもしれませんが、その後会社に居づらくなるからです。転職を前提としているなら良いですが、今後もその会社で働く場合、訴えを起こしてしまうと会社に居づらくなります。

従業員は、会社との交渉がうまくいけば、支払われていなかった残業代が支払われ、今後も残業代がもらえるかもしれないと考えています。

会社との交渉がうまくいかなかった場合、従業員は転職も視野に入れつつ、弁護士に相談してくる可能性があります。

残業代について労働基準監督署に相談する従業員もいる

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従業員の立場からすると、まずは会社と交渉し、交渉が決裂したら弁護士に相談する流れが王道でしょう。しかし弁護士に相談する前に、労働基準監督署に相談する、もしくは弁護士と並行して労働基準監督署に相談する、といったことも可能です。

管理職の残業代未払いが問題となった事例

管理職の残業代未払い事例1.マクドナルド

2008年に、マクドナルドの直営店で残業代の未払いに対し、店長が訴えを起こす事例がありました。店舗の場所は埼玉県熊谷市です。結果店長側の主張が認められ、残業代2年分等の750万円の支払いが命じられました。

また訴訟を起こした店長は現職中に訴訟を起こしたため、より珍しい事例となっています。

管理職の残業代未払い事例2.セントラルスポーツの事例

2014年にセントラルスポーツの元エリアマネージャーが残業代を請求する訴えを起こしました。こちらの事例ではマクドナルドの事例とは逆の結果になっています。

つまり、訴えを起こした原告である元エリアマネージャー側の訴えが棄却されたということです。判断要素は上でもご紹介した通り、裁量、勤務時間、給与です。

元エリアマネージャーはエリアを統括する地位にあり、労務管理や人事にも関与していました。また元エリアマネージャーは遅刻、早退、欠勤によって賃金が控除されたことはなく、また給与としても残業代と同等程度の管理者手当をもらっていました。

さらに元エリアマネージャーは勤務中に整骨院でマッサージを受けたこともあり、その際も特に会社から咎められることはありませんでした。つまり待遇としても勤務形態としても経営者に類似する状況であったため、管理監督者の該当性が認められました。

管理職の残業代は、状況の把握から

従業員が管理監督者に該当すれば、会社は残業代を支払う義務がありません。しかし管理監督者には該当しない、名ばかり管理職が多いのも事実です。従業員が残業代の支払いを求めて裁判で争った場合、管理監督者に該当するかどうかが争点になります。

そのため残業代を支払わなければならないのかどうか迷っている場合は、まず従業員の今の状況が管理監督者に該当するかどうかを考える必要があります。その結果管理監督者に該当しないなら、従業員が行動を起こしてくる可能性もあります。まずは状況をしっかり確認してから対応するようにしましょう。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

東京都千代田区にある税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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