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安全配慮義務違反をするとどうなる?3つの事例と4つの対策をわかりやすく解説!

安全配慮義務違反をするとどうなる?3つの事例と4つの対策をわかりやすく解説!

さまざまなメディアで安全配慮義務違反という言葉を目にすることがありますが、具体的にどのようなことが安全配慮義務違反にあたるのかをご存じでしょうか。

安全配慮義務違反が起こってしまうと知らなかったでは済まされず、場合によっては損害賠償請求や厳しい責任追及をされます。そして、一度安全配慮義務違反を起こしてしまうと企業の信頼は大きく損なわれてしまい、それを取り戻すには非常に多くの努力と時間が必要になってしまいます。

どのようなことが安全配慮義務違反となるのか、そして防止するにはどのような取り組みをすればよいのか、解説します。

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安全配慮義務とは

安全配慮義務とは、労働者が安全に働けるように企業が配慮しなければならない義務です。2008年3月1日に施行された労働契約法の第5条で明確に定義されましたが、その概念は1975年から存在しています。

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

引用:労働契約法|厚生労働省

この「生命、身体等の安全」には、身体的なものはもちろん、精神的な面も含まれます。例えば、従業員がパワハラなどによるストレスによって、うつ病など心の病になってしまった場合も安全配慮義務違反に問われてしまいます。

 

安全配慮義務違反の罰則は?

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安全配慮義務違反に問われた場合、民法による債務不履行や使用者責任、不法行為責任などを問われ、損害賠償を請求されるおそれがあります。また、近年は企業のコンプライアンスに対する社会の視線は厳しくなっているため、企業のイメージダウンも避けられません。 過去には安全配慮義務違反によって巨額の損害賠償請求を命じられた例も少なくありません。まずは、実際の安全配慮義務違反の事例を見ていきましょう。

 

安全配慮義務違反の事例:陸上自衛隊員死亡事件

陸上自衛隊員がバックしてきた自衛隊車両にひかれて死亡した事件です。この事件で1975年2月に最高裁判所は、国に安全配慮義務違反があったことを指摘し、遺族の損害賠償請求を認める判決を出しました。この判決によって「安全配慮義務」という概念が明確に示されました。

参考:裁判所判例検索 損害賠償請求 最高裁 昭和50年2月25日判決

 

安全配慮義務違反の事例:ゆうちょ銀行のパワハラ自殺事件

ゆうちょ銀行の従業員が上司からのパワハラによって自殺に追い込まれた事件です。この事件で徳島地方裁判所は、ゆうちょ銀行の安全配慮義務違反を認め、同社に対して慰謝料を含め約6100万円の損害賠償を命じました。

 

安全配慮義務違反の事例:電通の社員過労自殺事件

1991年に入社2年目の男性社員が過労によって自殺してしまった事件です。この事例では、最終的に東京高等裁判所によって電通に約1億6800万円という損害賠償を命じました。

このように、安全配慮義務違反を行った場合は多額の損害賠償を請求されます。また、場合によっては労働基準法などの法令違反にも問われ、法的責任も追求される恐れもあるため、絶対に防がなければなりません。

 

安全配慮義務違反の具体例

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過去には普通に行われていたようなことも、現在では安全配慮義務違反に問われることがあります。安全配慮義務違反を起こさないためには、どのようなことが安全配慮義務違反になるのかを理解しなければなりません。まずは安全配慮義務違反になる場合の具体例を見ていきましょう。

 

安全配慮義務違反になるケース:従業員に長時間労働をさせる

典型的な安全配慮義務違反のひとつが、従業員に長時間労働をさせることです。長時間労働では、過労死ラインの「月100時間」、「月平均80時間」という数字がクローズアップされがちです。ただ、その時間を下回っていても、長時間労働は安全配慮義務違反になります。特に人手不足が顕著な中小企業では、従業員一人ひとりの業務内容が多くなる傾向があり、長時間労働が起こりやすくなってしまいます。

また、長時間労働を是正しなければ、安全配慮義務違反だけではなく労働基準法などの法律違反になり、刑事責任を問われる可能性が高くなるので注意が必要です。

参考:厚生労働省 時間外労働の上限制限

 

安全配慮義務違反になるケース:従業員に危険が及ぶ可能性のある状況下でも出社させる

たとえば、新型コロナウイルスの感染拡大の中、リモートワークでできる仕事であるにも関わらず従業員を出社させた結果、新型コロナウイルスに感染してしまったとします。この場合も安全配慮義務違反に問われます。

また、インフルエンザにかかってしまった従業員を無理やり出社させる、台風で危険な状況にもかかわらず出社させたといった場合にも安全配慮義務違反に問われるでしょう。

危険な状況や過酷な状況下で従業員を無理やり出社させることは、安全配慮義務違反とともに、社会的な信用力の低下や従業員のモチベーション低下を引き起こす恐れもあります。

 

安全配慮義務違反になるケース:パワハラやセクハラを放置する

パワハラやセクハラが行われているにもかかわらず放置した結果、被害にあった従業員がうつ病になってしまったり、働けなくなってしまったりした場合にも安全配慮義務違反に問われてしまいます。

これは、会社がパワハラやセクハラが行われているのを知らなかった場合でも同じです。知らなかったということは、従業員の管理が出来ていなかったということなので、場合によってはより厳しい批判にさらされかねません。

 

近年は、「ブラック企業」という言葉が流行語大賞にノミネートされたり、ブラック企業大賞という企画がメディアで取り上げられるなど、劣悪な職場環境に対して社会の関心も高まってきています。また、SNSの普及によって、従業員自らが声をあげることも可能な環境になってきています。

そのため、パワハラやセクハラ、長時間労働などを放置すれば、あっという間に悪い情報が拡散され、企業イメージを大きく損なう結果になるでしょう。そのため、安全配慮義務違反になるような問題を放置せずに早期発見・早期対策をすることが重要です。

 

安全配慮義務を起こさないための対策

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安全配慮義務違反が起こってしまった場合には、早急に対応しなければなりませんが、そもそも安全配慮義務違反を起こさないことが大切です。安全配慮義務違反を起こさないためには、職場環境の改善や従業員のケアなどさまざまな方策があります。

 

安全配慮義務違反の対策:職場・作業環境の見直し

まずは職場環境や作業環境に危険な箇所はないか、長時労働が発生しやすい状況はないかなどを見直しましょう。その場合、管理部門の人が実際に現場を見てまわることをおすすめします。現場に関わっていない第三者の目線でチェックすることで、現場では気付かなかった問題に気付ける可能性があります。

そのうえで、現場の従業員へヒアリングを行いましょう。ヒアリングを行う際は、管理職だけではなく、実際に手を動かす一般職やパート・アルバイトといった従業員にもヒアリングすることをおすすめします。

無理なノルマなどによる長時間労働やパワハラは管理職の指示によって起こることがあります。そのため、管理職のみにヒアリングをしてしまうと、その事実を隠ぺいされてしまい、問題の発覚が遅れてしまうことにつながります。

問題の早期発見のためにも、さまざまな立場の人からヒアリングを行いましょう。

 

安全配慮義務違反の対策:コンプライアンスを徹底する

パワハラやセクハラなどが起こりやすい企業というのは、長時間労働や現場での事故も起こりやすい傾向にあります。したがって、コンプライアンスの徹底は安全配慮義務違反の防止において非常に有効な手段です。コンプライアンスを徹底することで、企業価値の向上や企業イメージのアップにもつながります。

コンプライアンスを徹底するには、前述の職場環境の見直しやヒアリングを行うとともに、コンプライアンス研修や管理職に向けた長時間労働を起こさないための研修などを積極的に行うとよいでしょう。

コンプライアンス徹底のための方法を詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。

 

安全配慮義務違反の対策:企業内カウンセラーの配置

本記事の冒頭でも説明したとおり、安全配慮義務には従業員の心のケアも含まれます。従業員のうつ病発症を防いだり、精神的不安を和らげたりするためには、企業内カウンセラーの配置をおすすめします。

企業内カウンセラーは、企業内部の従業員がつくことも可能です。ただし、心のケアという仕事は簡単なものではありません。従業員を企業内カウンセラーに任命する場合は、外部機関などでしっかりとした教育を受けさせましょう。

また、「メンタルヘルス・マネジメント」や「ケアストレスマネージャー」など、メンタルヘルス専門の資格を取得させるのもよいでしょう。内部の従業員に適切な人材がいない場合などは、専門の企業に外部委託を行うことも可能です。

 

安全配慮義務違反の対策:副業による過重労働にも注意

近年は、働き方が見直され、従業員の副業を認める企業も増えてきています。従業員が副業をすることで、自社では経験できないことを学び、その経験を会社での仕事に役立てたり、従業員自身のキャリアアップにつなげたりすることが可能です。しかし、従業員が副業をしている場合には労働時間の管理が難しくなり、過重労働につながりやすくなる点には注意が必要です。

 

厚生労働省は、2020年9月に副業による長時間労働を防ぐためのガイドラインを設けました。そのガイドラインでは、従業員からの自己申告で副業による労働時間を把握すること、定期的な面談によって従業員の健康管理を行うことが求められています。

今後は世の中で副業推奨の流れが加速し、副業を行う従業員も増えてくると予想されます。そのときになって安全配慮義務違反を起こさないためにも、今から少しずつでも体制を整えておくことをおすすめします。

 

しっかりと対策をすれば安全配慮義務違反は防げる

安全配慮義務違反は、ちょっとした油断で起こってしまいますが、しっかりとした対策をすれば防ぐことが可能です。従業員が安心して働ける環境を作ることは、生産性の向上や人材の定着にもつながります。これからの時代、さまざまな業界で人手不足が加速し、人材の獲得も困難になっていくことでしょう。魅力のある職場づくりのためにも、今一度、職場環境に気を配ってみてはいかがでしょうか。

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中村友則
記事の作成・監修者 中村友則
フリーライター

おもに経営や人事、管理者向けの記事をメインに執筆活動を行っているフリーライター。IT業界の現役エンジニアとしての経験を活かした技術系の記事にも強みを持つ。フリーライターとしての活動のほか、会社経営やフリーのフォトグラファー、日本野菜ソムリエ協会認定、野菜ソムリエとしての活動など幅広い分野で精力的に活動中。

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