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従業員による不適切投稿を防ぐには?コンプライアンス上の注意点を弁護士が解説

従業員による不適切投稿を防ぐには?コンプライアンス上の注意点を弁護士が解説

従業員によりSNSなどへの不適切投稿が行われた場合、企業は社会的評判を大きく落としてしまう可能性があります。

情報拡散が非常に容易になった現在では、企業は従業員による不適切投稿の防止への対策を打ち、自社への思わぬダメージを予防しておかなければなりません。

この記事では、企業が従業員による不適切投稿を防ぐためにできることについて、コンプライアンスの観点を中心に弁護士が解説します。

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従業員による不適切投稿の事例4選

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従業員によるSNSなどへの不適切投稿は、時として会社に深刻なダメージを与えます。

以下の4つの事例は、どれもご自身が所属する会社に起こってもおかしくないものばかりですので、法務・コンプライアンス担当者の方は注意深く対策を講じましょう。

(なお各事例は、実際の事案を参考に脚色を加えた架空のものです。)

 

不適切投稿の事例:社名をプロフィールに記載したアカウントによる誹謗中傷

大手上場企業であるA社部長のBは、SNS上で自らがA社の部長であることをプロフィールに記載していました。Bの投稿するビジネスに関する切れ味鋭い考察が、その肩書とも相まって信ぴょう性を増し、SNS上で多くのフォロワーを集めました。

ある日、Bが飲食店Xで不当な取り扱いを受けた旨をSNS上で告発し、飲食店Xに関する批判を立て続けに投稿しました。しかしその内容は、客観的には言いがかりと捉えられかねないものであり、誹謗中傷に当たる内容も含まれていました。

飲食店Xが公式アカウントから反論を投稿したことにより、一般ユーザーを巻き込んだ大炎上に発展し、寄せられた意見の多くが、飲食店Xを擁護する内容でした。

最終的にBは、誹謗中傷の投稿を撤回して謝罪しました。

同時に、A社としてもBの不適切投稿に関して、監督・指導の不十分を理由に謝罪し、再発防止に努める旨の声明を公式に発する事態に追い込まれました。

 

不適切投稿の事例:店舗内で撮影した不適切動画の投稿(バイトテロ)

大手飲食チェーンC社のアルバイト店員DとEは、いずれも東京都内の店舗で食材の調理を担当していました。

DとEは、SNS上での反響を得たいがために、一度廃棄した食材を不正に再利用して客に提供するまでの一部始終を動画に収め、SNS上にアップロードしました。

大手飲食チェーンであるC社において、あまりにも不衛生な食材管理が行われていたという事実は、SNS上でセンセーショナルな印象を与え、深刻な客離れを招きました。

最終的にはC社には数十億円規模の売り上げ減少が生じ、ブランドイメージが大きく傷つきました。

 

不適切投稿の事例:会社の機密情報を流出させる

食品加工会社であるE社の従業員Fは、E社の主力商品であるSという加工食品の調味料を製造する工程を担当していました。

Sの調味料は、その独特の風味により、消費者からたいへんな人気を集めていました。そのレシピは、E社にとって大切な営業秘密です。

しかし、ある日FはSNS上での人気を獲得するため、「Sの調味料の作り方教えます」というタイトルで、E社に無断でSの調味料を調合する一部始終を収めた動画をアップロードしました。

この動画を観た同業他社であるG社の従業員Hが、G社内でレシピを共有した結果、G社はSの味にそっくりな加工食品Tの製造・販売を開始しました。

Tの登場によりシェアを奪われた形となったE社は、Sの売り上げが半減したことに伴い、大幅な減益となってしまいました。

 

不適切投稿の事例:会社の公式アカウントでの失言

機械メーカーのI社は、SNS上での公式アカウントの運営を、従業員であるJ一人に任せていました。

Jのカジュアルかつキャッチ―な投稿はSNS上で人気を集め、フォロワーも相当数に上っていました。

しかし、ある日Jが軽い気持ちで行った投稿の中に、人種差別的な内容が含まれていました。投稿はI社の公式アカウントを用いて行われたため、I社は謝罪に追い込まれました。

 

なぜ従業員は不適切投稿をしてしまうのか?

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従業員が不適切投稿をしてしまうことの背景には、従業員全体にコンプライアンス意識が浸透していないという実態があります。

具体的には、以下のような問題点が存在するケースが多いです。

 

不適切投稿をする理由:会社の一員として世間に見られている自覚がない

所属する会社を明かしてSNS投稿を行う場合、投稿者には会社のイメージがつきまといます。

そのことを忘れて、個人的なアカウントだからといって好き勝手なことを書いていると、ある日思わぬ失言をしてしまい、会社が迷惑を被ることになりかねません。

特に大企業の場合は、従業員に対する世間のやっかみも相まって、些細な失言が大炎上に繋がってしまうこともあります。

 

不適切投稿をする理由:社会常識に対して鈍感

そもそも、どういった内容を書き込むと不適切投稿に当たるのかについては、社会常識が適切に備わっていなければ判断できません。

ここで大切なのは、社会常識は日々移り変わっていくものだということです。

特に最近では、差別やハラスメントに対する批判の目が厳しくなってきています。そのため、どのような言動が差別やハラスメントに当たるかについて鈍感・無知だと、不適切投稿が行われる可能性が高くなってしまいます。

 

不適切投稿をする理由:機密情報の重要性を認識していない

会社にとって、ノウハウや顧客情報などの機密情報の流出は致命傷になりかねませんが、そのことを従業員が正しく認識していないケースが残念ながら多く存在します。

従業員の機密保持に関する意識が薄いと、内部情報を軽率に書き込んでしまったり、機密情報の含まれたファイルを誤って投稿してしまったりするなどの事態が生じかねません。

 

従業員による不適切投稿を防ぐための対策は?

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不適切投稿の防止には、従業員のコンプライアンス意識の強化がポイントとなります。

また、会社が公式アカウントをSNS上で運営する場合には、不適切投稿が起こりにくい運用方法を検討しなければなりません。

 

不適切投稿を防ぐ方法:社内研修を徹底する

不適切投稿に関する従業員のコンプライアンス意識を高めるには、社内研修の実施が効果的です。

社内の法務・コンプライアンス担当者が主導して、事例を用いた講義やディスカッションを行えば、不適切投稿に関するリスクを従業員に周知できます。

可能であれば、社内研修は半年に1回、1年に1回など、定期的に行うことが望ましいでしょう。

 

不適切投稿を防ぐ方法:就業規則で従業員の禁止事項を定める

就業規則において、プライベートアカウントを用いた不適切投稿を従業員の禁止事項として定めておけば、違反した従業員に対する懲戒処分が可能となります。

懲戒処分を受ける可能性があるとなれば、従業員側もSNSの運用について慎重になり、会社名を伏せる・投稿内容を穏便にするなどの対応が期待できるでしょう。

就業規則において不適切投稿に関するルールを新設した場合には、その内容を速やかに従業員に対して周知しておくことも重要です。

 

不適切投稿を防ぐ方法:会社の公式アカウントでの投稿はダブルチェックを行う

会社の公式アカウントを従業員に運用させる場合は、投稿内容に問題がないか、最低限ダブルチェックできる体制を取っておくことが大切です。

SNSでの投稿は即時性が求められるので、早く投稿したいという事情もわかります。

しかし、公式アカウントによる投稿には多くの人々が注目しており、一度投稿してしまったものを引っ込めることはできません。不適切投稿が会社にもたらす損害の大きさを考えると、投稿前に事前のチェックを十分行うことが大切でしょう。

 

万が一不適切投稿が行われたら早めの危機管理対応を

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従業員による不適切投稿が実際に行われ、会社が批判にさらされてしまった場合は、迅速な危機管理対応を行う必要があります。

他の不祥事の例でもしばしば見受けられるように、不祥事に対する会社の対応が遅れると、そのこと自体が再び批判され、会社は二重にダメージを負ってしまいます。

こうした事態を避けるためにも、会社は迅速に謝罪と再発防止を世間に対して表明し、実際に不適切投稿が起こらないような対策を講ずることが大切です。

危機管理対応を行ううえでは、素早い事実関係の調査や、社内規則の変更を含めた法的な検討が求められます。会社内部の法務担当者だけでは手が回らない場合は、外部弁護士のサポートを受けながら対応すると良いでしょう。

 

従業員全員にコンプライアンス意識を浸透させましょう

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従業員による不適切投稿を防止するには、社内研修や就業規則の周知などを通じて、従業員のコンプライアンス意識を高めることが大切です。

会社は、従業員のプライベートまでコントロールすることはできないので、不適切投稿を防止できるかどうかは、ある程度従業員の自主性に任せざるを得ません。だからこそ、法務・コンプライアンス担当者が主導して、従業員をどのように啓蒙するかが重要になるのです。

従業員を指導する立場として、法務・コンプライアンス担当者自身にも、高いコンプライアンスの素養が求められることは言うまでもありません。ぜひ社会常識に敏感になり、プロフェッショナルとして、不適切投稿のリスクから会社を守ってください。

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弁護士阿部 由羅(あべ ゆら)
記事の作成・監修者 阿部 由羅(あべ ゆら)
ゆら総合法律事務所 代表弁護士

西村あさひ法律事務所にて不動産取引・金融法務・一般企業法務等を中心に従事。その後、外資系金融機関法務部にてプライベートバンキング・投資銀行業務などを担当。退職後に現事務所設立・同代表。一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。民法改正・個人情報保護法関連・一般企業法務への対応多数。共著書に『債権法実務相談』(西村あさひ法律事務所編)。東京大学法学部卒業・同法科大学院修了。
https://abeyura.com/

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