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金銭解雇とは?日本での実情や4つのメリットを紹介!

金銭解雇とは?日本での実情や4つのメリットを紹介!

金銭解雇への理解を深めることは、不当解雇の防止や、公正公平なマネジメントのために非常に重要です。

また、現在働いている職場で労使トラブルが起きる可能性はゼロではありません。問題発生時に適切な対応ができるよう、管理部門を担当している人は、是非本記事の内容を実務上の参考にしてくださいね。

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金銭解雇って何?

はじめに解説するのは、金銭解雇の基本的事項です。金銭解雇の理解を深めるためにも、「解雇」についての解説から始めます。

 

法律上の金銭解雇の定義

解雇は、法律によって厳しく制限されており、容易には成立しません。

実際に法律の内容と照らし合わせながら、解雇の定義を確認します。下記は、労働契約法に定められている、解雇についての条文です。

(解雇) 第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用:労働契約法第16条|e-Gov法令検索

解雇するに至った理由が、この条件に該当するか否かの判断が非常に難しいのです。

会社側の都合に従業員が納得できず、裁判などの労働紛争に発展してしまう可能性が高くなります。裁判でも解雇が不当だと判断される場合は多く、そうなると結局解決には至りません。

解雇が不当だと判決が下っても元の職場には戻れず、結局労働者が泣き寝入りして労働契約を解消するケースがあるのです。

 

金銭解雇とは

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金銭解雇とは、裁判で解雇が不当とされた場合に、従業員に金銭を支払うことで労働契約を解消する制度です。金銭解決制度とも言われます。

通常、解雇が不当だと判決されれば従業員は復職することになりますが、前述したとおり、一度解雇宣告された従業員がスムーズに復職するのは難しいです。労使間にある根本的なトラブルが解決した訳ではありません。

仮に復職しても従前の問題を抱えたままであるうえに、一度労働紛争まで発展したことで、両者の関係は冷え切っていることが予想できます。そこで、復帰する代わりに金銭を支払うことで納得してもらい、労働契約を解消するのです。

 

金銭解雇は、「お金を払えば従業員を自由に解雇できる制度」と誤って認識されるケースが多くあります。

金銭解雇は、あくまで裁判で解雇が不当だと判断された場合に、金銭で労働契約の解消を図るものです。正しく運用すれば、労働者の良好な雇用環境を脅かすものではありません。後ほど解説しますが、たしかに金銭解雇によるデメリットも考えられます。しかし、必ずしも労働者に不利な制度ではないことを理解しておきましょう。

 

金銭解雇の現状

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お金を支払うことによる労働紛争の解決は、様々な事案で行われているのが現状です。それらが制度として確立しているのか、どのくらい社会に浸透しているのかなど、日本での金銭解雇の実情を整理します。

 

金銭解雇は制度として確立していない

現状では、労働者と解雇をめぐって争った場合に、お金を払って解決する制度は日本にありません。海外では金銭による解決が制度として確立されている国もありますが、日本では各企業の裁量で金銭による解決を図っているのです。

ただし、お金を払うことで労使間のトラブルを解決するケースはよくあります。あくまで「制度化されていない」という点を理解しておきましょう。

 

制度導入の動きが進んでいる

金銭解雇についての明確なルールはありませんが、2003年の労働基準法改正などをきっかけとし、制度としての導入が長い間検討されています。

厚生労働省では、「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」が定期的に開催され、金銭による救済制度を仕組み化するための議論が実施されているのです。

2020年11月現在では、未だに導入は実現しておらず見通しも立っていません。ただし、今後制度化する可能性は十分に考えられます。

 

金銭解雇に金額の相場はあるのか?

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金銭解雇で支払われる金額に、相場や基準はありません。従業員が被った被害や不利益の程度、勤続年数、そのときの給料など様々な要素が絡んでくるため、事案によって金額は異なります。小さい会社であれば支払いできる金額にも限界があるため、会社の懐事情も影響してくるでしょう。

金銭解雇が制度化されていない現状では、金額はその事案によるとしか言えないのです。現状では、弁護士などに相談しながらケースバイケースで適切な金額を支払う必要があります。

 

金銭解雇のメリット

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金銭解雇が制度としての導入が検討されているのは、従業員や使用者へのメリットがあるためです。金銭解雇は従業員側に不利と認識されがちですが、しっかりと利点があります。特に日本では解雇が非常に厳格であるため、救済措置的な役割が期待されているのです。

金銭解雇が制度化された場合の利点を4つ取り上げました。

 

金銭解雇のメリット:従業員が無理に職場復帰する必要がなくなる

解雇が不当だと判決が下れば、当該従業員は職場に戻ることになります。しかし、会社からの信頼が回復した訳ではなく、周囲も解雇を言い渡された社員として見るようになるため、当人への精神的負担は大きいです。

それだけでなく、企業側が解雇を言い渡すに至った根本的なトラブルが解決した訳ではないため、企業側とその従業員に遺恨が残る形となります。

そのまま会社を辞めることも可能ではあるのですが、働き口がすぐに見つかるとは限らず、生活は苦しくなるでしょう。そこで、金銭による解決ができれば、労働者の当面の生活が保証されます。

負担を抱えたまま、無理に現在の職場で働き続ける必要はなくなるのです。

 

金銭解雇のメリット:不当解雇による泣き寝入りを防止できる

解雇宣告に対して、「不当だ」と対抗できる労働者は実際のところ少数です。多くの労働者は、仕方なく解雇を受け入れる形で泣き寝入りしています。

金銭解雇が制度化すれば、解雇に納得いかない場合の後ろ盾となります。使用者側の理不尽な都合での解雇による、泣き寝入りを防ぐことができるのです。

 

金銭解雇のメリット:労働紛争が解決しやすくなる

解雇の妥当性を判断することは容易でないため、解雇をめぐる紛争は長引きやすく、かなりの労力とコストがかかるのです。そこで金銭解雇が確立されれば、「争いを長引かせるよりも金銭を支払った方が負担が小さくて済む」という判断が可能になります。

むやみに労働紛争が長引くことがなくなり、解決の方向に向かいやすくなることが期待できるのです。

さらに、現状ケースバイケースで行われている金銭解雇ですが、支払いの手続きが明確になることでトラブルが落ち着くまでの時間が短縮されるでしょう。

 

金銭解雇のメリット:支払うべき金額に基準ができる

こちらは、企業側への利点です。

金銭解雇が制度として確立していけば、支払われるべき金額に一定の基準ができます。金銭の目安ができることで、紛争解決までの見通しが立てやすくなるのです。

また、解雇を言い渡す際に、リスクに備えてその分の金額を予め備えることも可能になります。

 

金銭解雇のデメリット

金銭解雇の制度化はかねてから何度も議論されていますが、実現に至らない理由として労働者への不利益が叫ばれているからです。

ここからは、金銭解雇のデメリットを解説します。誤った金銭解雇の行使は社内外の信用を大きく落とすことに繋がるため、しっかり理解しておくことが重要です。

 

金銭解雇のデメリット:リストラの手段として悪用される可能性がある

金銭解雇を使用者側が正確に行使せず、不当解雇の手段として悪用されることが危惧されます。

金銭解雇が制度化されても、従業員がその内容を詳しく理解するとは限りません。そのため、「お金を払うから退職して欲しい」と言われれば、それが金銭解雇だと勘違いしたまま受け入れる心配があるのです。

また、裁判のリスクやコストを恐れて、事前に金銭での解雇を図るケースが出てくる可能性も考えられます。

 

金銭解雇のデメリット:金銭をちらつかせた退職勧奨が可能になる

「〇〇円支払うから~」という退職勧奨が可能になるデメリットもあります。退職勧奨は本人の自由な意志で決定できる点で、解雇に比べると労働者の権利が保たれますが、それでも容易に行われるべきではありません。

また、退職勧奨は度が過ぎると退職強要になり、違法性が高くなります。金額を釣り上げることで退職を迫ったり、執拗に退職を要望すれば違法となる可能性が高まり、さらなる問題に発展するかもしれません。

 

金銭解雇のデメリット:お金を払えば解雇できるという風潮が広まる

この記事の序盤で、金銭解雇は「お金を払えば解雇できる制度」と誤って認識されているケースが多いと説明しました。金銭解雇がよりメジャーになることで、この誤った風潮が更に広まってしまう可能性があります。

誤った認識のまま理解することで、「自分もいつか解雇を言い渡されるのではないか」と従業員の精神的な負担になることも危惧されます。結果として、労働者の立場が弱くなってしまう危険性もあるのです。

 

金銭解雇の注意点

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金銭解雇は労使双方に利点があるとはいえ、そもそも解雇を宣告する状況を作らないことが先決です。

その点を踏まえ、金銭解雇を理解するうえで注意すべき点を2つあげました。

 

金銭解雇の注意点:解雇に踏み切る前に、問題解決は充分だったか

まずは、抱えている問題について、解雇以外での解決を図ることが大切です。

一度解雇を踏み切ってしまえば、トラブルに発展する可能性は高く、裁判や金銭解決による莫大な労力とコストがかかります。

能力不足を理由とした解雇であれば、それまでに充分な指導を重ねたか。経営不振や不景気による整理解雇であれば、雇用調整助成金などの制度を活用したかなど、状況に応じた対策を取ることが重要です。

 

金銭解雇の注意点:解雇の正当性について吟味する

問題への対策を十分に行っても現状が改善されず、やむを得ず解雇に踏み切る決断をする場合もあるはずです。その場合は、解雇の正当性をしっかり吟味したうえで実行してください。

解雇の基準を満たすのか、第3者目線で正当性を考えることが重要です。不当になっても金銭で解決すれば良い、と金銭解雇の実施を前提とした解雇は、本来あるべき姿ではありません。

解雇の正当性については、様々な要素や条件を鑑みて慎重に判断することが大切です。

 

不当な解雇の予防が第一

金銭解雇が労働紛争の救済措置となることは期待できますが、不当な解雇をしないことを第一に考えましょう。本来、金銭解雇を実施する状況を作らないことが望ましいのです。

また、金銭解雇は、正しく実施しなければ社内の人間だけでなく社会全体に悪影響を及ぼします。間違った金銭解雇を蔓延させないためにも、それぞれの企業が正しい運用に努めなければならないのです。

 

もし、現在務めている企業で、金銭解雇の悪用や不当解雇が起きていれば、転職もひとつの選択肢です。管理部門への転職を希望する場合は、是非スキフルをご利用ください。

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紺野 天地
記事の作成者 紺野 天地
フリーランス/高等学校教諭一種免許状(保健体育)

フリーランスのライター。国立大教育学部卒。地方公務員として4年間人事労務を担当し、民間企業(発達障がい児支援)に転職。1年間の勤務後、文章を通して人の行動や価値観を広げるきっかけを作りたいと考え、フリーライターへの転身を一念発起。現在はオウンドメディアの記事作成をメインに、形態を問わず執筆活動をしている。得意ジャンルは、経歴を活かした人事労務、教育、転職、働き方、スポーツなど。https://twitter.com/amatsuchi10

Back Office Magazine編集部
記事の監修者 Back Office Magazine編集部
hiqers株式会社

士業と管理部門の存在価値をアップデートするメディア「Back Office Magazine」の編集チームです。明日からすぐに生かせるノウハウや、現場で戦う人の声など、ここでしか読めない情報を提供。士業・管理部門の方が集う場を作るとともに、その存在価値を広く世に伝え続けます。

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