税務

【令和3年の税制改正】電子帳簿保存制度はどう変わる?

【令和3年の税制改正】電子帳簿保存制度はどう変わる?

2020年10月1日、改正電子帳簿保存法が施行されました。

電子帳簿保存法は国税庁管轄のもと、同法を普及させ、企業の業務効率化・ペーパーレス化を推進するべく1998年に制定された法律です。以後、4回の改正を経て、現在に至っています。

コロナ禍で在宅勤務やテレワークが新しい働き方として浸透する中で、その注目度はいよいよ増しており、バックオフィスの業務効率化・企業の生産性向上にもつながると期待が高まっています。

改正されたことでより企業や個人事業主にとって導入しやすくなった電子帳簿保存法について、制定された背景や法律の内容、保存要件から税務署への申請方法に至るまで幅広く、そして分かりやすく解説していきます。

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電子帳簿保存法とは

高度情報化・ペーパーレス化が進展する中で、会計処理の分野においてもコンピュータを使用した帳簿書類の作成が普及してきているため、経済界をはじめとする関係各界から、帳簿書類の電磁的記録(電子データ)及びマイクロフィルムによる保存の容認について、強い要請がありました。こういった要請を受けて、税制改正の一環として制定されたのが電子帳簿保存法です。

1998年に成立した電子帳簿保存法は、データに対して、電子形式での保存を認めたものです。

国税関係の帳簿書類は最低でも7年もしくは10年の保管が義務付けられていましたが、税務署長の承認を受けることができれば電子データとして保存できます。

 

電子帳簿保存法で規定されているスキャナ保存制度とは?

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スキャナ保存制度とは、電子帳簿保存法に規定されている国税関係書類の保存方法の1つです。文書保存の負担軽減を図る観点から、各税法で保存が義務付けられている書類は一定の要件の下で、紙のままではなくスキャナで読み取った電子データの形式で保存できます。

 

スキャナ保存制度の対象となる書類

取引相手から受け取った書類と自己が作成して取引相手に交付する書類の写しとされ、具体的には契約書、請求書などが当てはまります。仕訳書、総勘定元帳、その他の帳簿(補助簿)などの国税関係帳簿や貸借対照表、損益計算書、その他の書類などの決算関係書類はスキャナ保存できません。

(出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第3条3項

 

スキャナ保存制度の申請方法

承認申請書と添付書類(システムの概要など)の2通が必要です。公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が認証するソフトウェアを使用すれば、簡素な様式の申請書で申請できます。操作説明書等の添付は必要ありません。

保存を開始する日の3ヶ月前までに所轄の税務署に申請し、税務署長の事前承認を得る必要があります。

 

スキャナ保存承認以前の書類もスキャナ保存が可能

承認を受ける前に作成・受領をした重要書類(過去重要書類)についても一定の要件を満たせばスキャナ保存をすることが可能です。紙ベースの書類もデータ化できますので、通常業務に支障が出ない範囲で時間を作り、業務の合間に形骸化してしまっている紙の書類の電子化を進めましょう。

 

電子帳簿保存法で認められている保存方法

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2005年にe-文書法が制定されたことに伴って3月に改正され、「スキャナによる電子化保存」が認められ、新たに規定が追加されました。そのため、帳簿書類を電子データで保存する方法は次の3通りです。

 

電子帳簿保存法で認められている保存方法:電磁的記録

電磁的記録は、人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録です。電子計算機による情報処理用に供されるものを言います。具体的には各種書類をPCで作成し、ハードディスク、DVD、磁気テープ等の記録媒体上に、情報として使用し得るものとして、情報が記録・保存された状態にあるものを言います。

 

電子帳簿保存法で認められている保存方法:COM

「COM」とは、写真(電子計算機出力マイクロフィルム)によって作成する記録を言います。各種書類をPCで作成し、COMによって保存します。

 

電子帳簿保存法で認められている保存方法:スキャナ

紙の書類をスキャンしてデータに変換して電子データのまま保存します。

 

電子帳簿保存法の改正内容

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1998年の制定後、同法は段階的に見直しがされてきましたが、今回の改正では電子データの保存要件が従来より緩やかにされることになりました。

 

電子帳簿保存法の改正前

従来までは以下の①、②の保存方法が規定されていました。

【従来の保存方法】

  • ①発行者のタイムスタンプが付された電子データを受領した際には、受領者側がデータの受領後、遅れることなくタイムスタンプを付与。
  • ②改竄防止等のための事務処理規定を作成し運用。

従来の電子帳簿保存法の場合、受領者側は、「受領してから3営業日以内」にタイムスタンプを付さねばなりませんでした。しかし、この保存要件は経理担当者にとって負担が大きく、多くの企業にとってこの要件に応えることは簡単ではありません。

 

電子帳簿保存法の改正後

今回の改正では新たに③、④の保存方法も要件として追加され、電子取引を行った場合の電子データの保存要件の縛りが緩やかにされました。

新しく認められる保存要件では、以下のように変化しています

【改正後の保存方法】

  • ③受領者側が、データを自由に改変できないシステム・サービス(電子帳簿保存法に準じてデータが保存できるクラウドサービスなど)等を利用。
  • ④発行者側でタイムスタンプを付与。

 

今回の改正では必ずしも受領者側がデータを受け取った際にタイムスタンプを付与する必要がなくなりました。③の方法では、受領者側がデータの改竄のできないクラウドサービスなどを利用すればタイムスタンプを付与しなくてもよくなります。 また、発行者側からタイムスタンプを付与した電子データ等が送られてきた際も受領者側はタイムスタンプを付与しなくても保存できるようになります。

 

電子帳簿保存法以外の税制改正についてはこちらから

 

税務署への申請と税務署長の承認が不要!電子帳簿保存法第10条を解説

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2020年度の税制改正では、電子マネーやクレジットカードなどのキャッシュレス決済の場合、利用明細を電子データとして受け取り、それを電磁的記録として保存することで、紙での保存に変えることができるとされています。ここでは電子帳簿保存法の第10条に記載の電子取引について、その扱いを見ていきます。

 

電子取引と対象の取引

「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引のことです。

いわゆるEDI取引やインターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引など含まれます。電子取引でもその取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならないことになっています。

 

保存方法

保存する際には以下の種類や形式をはっきりさせましょう。

種類 保存形式
メール 本文+添付ファイル
イメージやファイル 暗号化されたものは復号

いずれにせよ、原則電子情報とし、例外として紙への印刷とCOMの2通りが認められています。

 

保存する際に必要となる措置(施行規則第8条)

電帳法第10条の施行規則第8条1項には、電子データの保存措置について以下のうち、いずれかの措置を取ることが定められています。

  • 認定事業者のタイムスタンプを付す
  • 保存を行う又は直接監督する者に関する情報を確認できる

また、平成27(2015)年度改正で、タイムスタンプで非改竄処置を施し、記録を行う者の情報を明確化することでよくなりました。

 

事務処理規程を整備する方法

電磁的記録の記録事項は、正当な理由がない訂正や削除の防止に関する事務処理の規程を定め、真実性の確保を図る方法です。

この規程は自社の業務のみなく、取引先とのやりとりが含まれる場合も少なくありません。そのため、実際の業務に即した内容で作成する必要があります。自らの規程のみによって防止する場合はデータの訂正・削除を原則禁止し、業務処理上やむを得ずデータを訂正・削除する場合の事務処理規程と、データ管理責任者及び処理責任者を明確にする必要があります。

取引先との契約によって防止する場合は、電子取引の種類を問わず、取引先とデータ訂正等の防止に関する条項を含む契約を締結すること、事前に前述の契約を締結することで運用を図ります。

 

電子帳簿保存法のメリット

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電子帳簿保存法の適用を受けることで、保管場所や保管に係るコストを削減できるメリットと、ペーパーレス化に伴う経理業務の業務効率化メリットが期待されています。

 

電子帳簿保存法のメリット:紙ならではのリスクが軽減できる

国税関係の帳簿書類は最低でも7年もしくは10年の保存が義務付けられていました。取引数の多い企業にとっては最大10年分もの取引情報を紙ベースで保管するのには物理的な保管スペースが必要ですし、保存用のファイルやキャビネットなどのコストもかかります。

印刷で文字が潰れてしまって判別しづらくなったり、破れたり、火事などで丸ごと消失してしまうリスクもなきにしもあらずです。

電子帳簿保存法を適用することで、読みやすい状態のまま長期的に場所も取らず、安全な状態で必要書類を保存できます。社内のペーパーレス化や電子化がより促進されることでしょう。

 

電子帳簿保存法のメリット:業務の効率化が図れる

従来のように紙で必要書類を保管していると、通常業務の他に本来ならば不要であるはずのファイリング業務が発生してしまったり、又そのように整理していてもいざという時に目当ての当該書類を見つけられなかったりして業務が停滞する恐れがあります。電子データであれば必要なデータは瞬時に抽出することができ、また紙原本でのやり取りで発生していた郵送作業が削減されます。これらによりバックオフィス業務がより一層効率化することが期待されています。

 

電子帳簿保存法のデメリット

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電子データによる保存は徹底的に無駄を省き、様々な面で効率化が期待できますが、全く費用がかからないわけではありません。電子帳簿保存法の適用を受けるためには、対応するソフトウェアまたはクラウドシステムなどを導入するための初期費用や、運用していくためのランニングコストがかかります。

また、運用担当者のITリテラシーもそれなりに必要になってくるでしょう。スタートアップの経営者や個人事業主など小規模な事業体にとってはこの出費がデメリットになる場合もあります。

 

電子帳簿保存法のデメリット:承認申請が必要

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電子帳簿保存を行うためには、税務署長の事前承認が必要になります。

 

対象となる帳簿と書類

自己がコンピュータを使用して作成・交付する決算書類です。対象となる帳簿は仕訳帳、総勘定元帳、経費帳などです。帳簿のうち一部のみを電子データによって保存することもできます。作成する過程で一部を手書きで記録するなどは法律の適用外です。

 

申請に必要な書類

スキャナ保存制度と同じく、承認申請書と添付書類の2通が必要です。

承認申請書は帳簿と書類で申請書の様式が異なります。市販のソフトウェアを利用するかマイクロフィルムで保存するかなど保存方法によって申請書の書式は違います。前項で説明したスキャナ保存制度についても、「これからのスキャナ保存の承認」と「過去分重要書類の適用」は届出が別になる点に注意が必要です。

国税庁のホームページを参考に、自社に適切な申請を行いましょう。

申請書はこちらからダウンロードできます。

承認申請書には、帳簿の種類、備付けを開始する日、保存場所、帳簿の作成・保存に使用するシステムやソフトウェアの概要などを記載します。

 

申請期限

帳簿は備付けを開始する日の3ヶ月前まで、書類は保存を開始する日の3ヶ月前までに所轄の税務署で申請し、税務署長の事前承認が必要です。課税期間の途中から帳簿類の記帳を電子データに切り替えることはできませんので課税期間の開始日に合わせて申請する必要があります。年に1回しかチャンスがないので仮に2021年4月から利用したいのであれば2020年のうちに申請しておくのが良いでしょう。

 

電子帳簿保存法の改正で電子化は加速化する

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電子帳簿保存法は今後も関係各界の要請を受けてより利用しやすいものへと変わっていくでしょう。日本ではまだペーパーレスの普及が十分とは言えませんが、世界においては既に「常識」となっています。この改正を機に、ますます電子取引やクラウドサービス導入を検討する企業が増えることが予測されます。電子データはその特性上、オンライン上であればいつでもどこでも、そして複数人がアクセスすることができ、一つのリソースで多くの人と共有することが可能です。

この可塑性がビジネスをより柔軟に、そして高速で進めていく鍵となります。今後デジタル社会を生き抜くためにも、興味がある方は是非同法の適用を受けて、資源の電子化に取り組んでみましょう。

 

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Back Office Magazine編集部
記事の作成・監修者 Back Office Magazine編集部
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