社員が出張についてまとめる「出張報告書」ですが、どうやって書けばよいのかと、書き方について頭を抱えている社員は少なくありません。
チェックする管理側としても、読みづらい報告書だとせっかくの出張の成果や所感への正しい評価が難しくなります。ただ「具体的にどう書き方を指示すれば?」と、指導方法にお悩みの担当者もいるのではないでしょうか。
当記事ではそんな担当者に向け、「出張報告書の読みやすい構成」や「出張報告書の書き方のポイント」について、例文や具体例を添えて解説します。
わかりやすい出張報告書が作成できれば、管理側と社員の双方が今後の方針や改善点を把握しやすくなります。ぜひ記事を参考にしてください。
出張報告書の読みやすい構成とは?例文と併せて解説
あらためて出張報告書とは、「出張先で何をしていたのか」「どんな成果を挙げてきたのか」など、社員が出張先で得た情報や所感を報告するための書類です。
出張報告書を書くときは、「わかりやすく簡潔な構成と文章」が基本になります。具体的には次の順序で構成を作って作成することで、読み手がストレスなく必要な情報を得られます。
【出張報告書を書く順序】
- 出張の概要
- 出張中の具体的な行動歴
- 出張で得た成果
- 出張で何を感じたか(所感)
- 出張にかかった経費一覧
もし会社で報告書のテンプレートが決まっていないときは、ぜひ社員と共有する際の参考にしてください。以下では、セクションごとの詳細を見ていきます。
1.出張の概要
出張報告書の最初の項目は、「どんな出張に行ったのか」が一目にわかるように概要を記載します。チェック側としても、いつの出張の報告書なのかが把握しやすくなるためです。
具体的な記載内容は次のとおりです。
- 出張日時
- 出張先
- 出張の目的(研修会やセミナーの名前、商談の内容など)
- 主催者名や講師名
- 日時や時間などの大体のスケジュール
- 出張の同行者
あくまで出張の全容把握が目的であるため、ここではまだ具体的な内容には触れません。全体像が掴める程度の留めてもらいます。例文を見ていきましょう。
- 出張日時:2020年9月25日
- 出張先:大阪府・インデックス大阪
- 出張の目的:製造機器の展示会への参加
- 主催者:一般社団法人〇〇
- スケジュール:9月25日13:00~大阪駅到着・14:00~展示会参加・17:00~閉幕
- 同行者:課長
概要は文章で書くのではなく、要素だけを抽出してコンパクトにまとめてもらうのがコツです。
2.出張中の具体的な行動歴
出張中の行動や商談について、具体的に記入するセクションです。いくつかのシチュエーションで例文を見ていきます。
- 14:00~製造機器の展覧会先で生産ラインに応用できそうな△△加工の技術調査
- 11:30~〇〇社と来期以降の契約を締結
- 15:20~広報部と新商品についてのスケジュール調整
- 10:00~本社のミーティングルームにて社員研修
出張先で「誰(何)に対して」「どんなことをしたのか」がわかるように、サービスや商品名、部門名などまでしっかりと記入します。例文のように行動した時間も併せて記載を指示することで、時系列や社員の行動もチェックしやすいです。
情報量が多いときや文面だけでは伝わりにくいときは、パンフレットや議事録などの資料も、報告書に添付するように指示しましょう。
3.出張で得た成果
出張先での行動の結果、具体的にどんな成果を挙げたのかを記載するセクションになります。出張の目的の多くは、商談を成立させたり新しい知見を得たりなど、会社の利益になる成果を挙げることです。ここでは成果について数字や事例などを駆使し、事実ベースでわかりやすく書いてもらいます。
前項の「出張の具体的な行動歴」に則った例文は次のとおりです。
- △△技術を開発した◇◇工業との商談を取り付けた
- 〇〇社との来期以降の契約数は今期の1.2倍になった
- 新商品のリリースに合わせ、7月25日にはCM企画の最終決定を行う旨が決まった
- 社員研修では「リーダー論」「後輩の指導の仕方」などを学んだ
もし出張の目的に対し、思うような成果が出なかったときは、「達成できなかった理由」や「相手の要求や意見」など、その後の改善につながる報告を書くように指示します。
4.出張で「何を感じたか」の所感
出張に向かった社員個人の考えや感じたこと、今後の課題についてなども所感として出張報告書に記載します。所感をチェックすることで、管理側もより詳細な出張の内容を掴むことが可能です。また社員自身にとっても、スキルアップや振り返りによる記憶の定着というメリットがあります。
例文を見ていきましょう。
今回の展示会では、以前は技術的に難しかった5mm以下の金属の加工を可能にする新しい機器の展示がありました。機器の開発元である△△加工のお話を聞くと、おもわず「そんな発想があったのか」と、私自身非常に刺激を受けました。
さらに深堀りしてお話を伺うと、弊社が持つ製造ラインに応用できそうな部分があったため、その場で名詞を交換、一度場を設けて説明を受ける約束と取り付けています。こういった出会いは初めてでしたが、先方の丁寧なご対応や課長のサポートもあったおかげで、貴重な経験をさせていただきました。今後はここで得た知見や体験を活かし、新しい販路拡大につなげていきます。
5.出張にかかった経費一覧
最後は、出張にかかった経費をまとめて記載します。
- 電車・バス・飛行機などでの移動にかかった「交通費」
- 出張先のホテルにかかった「宿泊代」
- 取引先などとの接待にかかった「接待交際費」 など
このとき、社員が嘘の金額を申請し、不正に経費を受け取る「空出張」を行う可能性があります。できるだけ領収書やICカードの支払履歴などの提出を義務付けておくことをおすすめします。
会社によっては、出張報告書とは別に出張申請書にて提出するケースもあります。もし出張申請書のフォーマットがあるときは、事前に社員と共有しておきましょう。
チェックしやすい出張報告書の書き方のポイント
管理部門の方は、あらかじめ社員に「わかりやすい出張報告書の書き方のコツ」を教育しておくことをおすすめします。メリットは次のとおりです。
- 管理側で報告書をチェックしやすい
- 社員側がより深く出張の振り返りができる
- 作成とチェックの双方の労力が削減できる
ここからは出張報告書の効率のよい書き方について詳細を見ていきましょう。
出張報告書のポイント:必要性を社員に意識させること
そもそも社員自身が「出張報告書は形だけで書く意味がない」と感じていれば、構成や書き方を教育してもよい報告書は上がってきません。「なぜ出張報告書が必要になるのか」「書くことでどんなメリットがあるのか」を事前に共有しておきましょう。
また、報告書を受け取った後は具体的なフィードバックを社員に返し、「ちゃんと読んでいます」という事実を伝えることをおすすめします。次回以降の改善や社員のモチベーションアップにつながるはずです。
出張報告書のポイント:デザイン面や情報のまとめ方も意識してもらう
読みやすい出張報告書とは、文章の質や構成の見やすさだけではありません。デザイン性や情報のまとめ方も意識してもらうことで、管理側にとってもさらにチェックしやすい報告書になります。具体的には次のとおりです。
- 基本は「事実ベース」で作成する(~と思うなどの主観的表現は避ける)
- 1文が200文字、300文字など長くしすぎない
- 囲み線などを利用して区間を明確に区切る
- 要素は箇条書きにして見やすくする
- 文字を詰めすぎず適度に読点「、」を入れる
- 書式の余白はできるだけ取り去る
「見やすい」「読みやすい」文章の指導は、社員のプレゼン力や資料作成スキルの向上にもつながります。
出張報告書のポイント:提出前に必ず全体を見直させる癖を付けさせること
一度作成した出張報告書は、最低でも1回は見直させるようにしましょう。基本的なこととはいえ、見直しを疎かにする社員は意外と少なくありません。
見直しについては、事前に「どこを見るべきなのか」を社員に共有しておきましょう。
- 人名や日付、固有名詞の間違いなどの誤字脱字
- 文章の論理展開の破綻
- 内容の重複(同じことを何度も説明していないか)
- 情報の不足(書いていないことはないか、添付資料で補填できているかなど)
- 印刷したあとの文章切れやレイアウト崩れ
- 捺印の有無
内容次第では、上の役職や取締役まで確認する報告書になるかもしれません。書類をチェックする管理側としても、上記について社員とダブルチェックが必要です。
出張報告書のテンプレートを参考にしてみること
インターネットでは、出張報告書の無料テンプレートがダウンロードできます。
テンプレートを用意しておいたほうが、管理側も社員側の余計な労力を減らさずに済みます。
出張報告書の書き方を覚えて業務改善やスキルアップに役立てよう
出張報告書の書き方を社員に身に付けてもらうことで、管理側と社員側の両方にメリットがあります。管理側は出張の成果が確認しやすく、社員側は出張内容の振り返りと整理によってアウトプットを通じた学習につながるためです。
出張報告書の作成は、次のことを意識して作成します。
- 出張概要から得られた成果まで「読みやすい構成」を組み立てる
- 成果や感想について数値や固有名詞を使って具体的に書く
- デザイン面でも見やすく整える
- 必ず見直しを行う
管理側と社員側、双方が効率よく業務を進められるように、あらかじめ出張報告書のよい書き方を理解しておくことをおすすめします。