人事・労務

顔採用の実情とは?会社にもたらす意外なメリットもご紹介

顔採用の実情とは?会社にもたらす意外なメリットもご紹介

顔採用には、「外見で合否を判断するって差別ではないの?」「顔採用ってイケメンや美女を採用することでしょ?」といったイメージがつきがちですが、実はそうではありません。その理由について、答えていきたいと思います。

顔採用による企業へのメリットや導入事例なども紹介するので、特に企業の管理部門の人は是非参考にしてください。

顔採用って何?

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まずは、どのような採用方法を顔採用と言うのかを整理しておきましょう。

顔採用に明確な定義はなく、以下のようなパターンがあります。

 

顔採用のパターン:容姿そのものを評価の対象とする

容姿そのものを評価対象とし、世間的に言われる「イケメン」や「美女」が優遇される顔採用があります。差別的に捉えられることもあり、マイナスイメージが付きやすい選考方法です。

この顔採用には、容姿だけを合格基準としている場合と、能力や内面に加えて容姿をひとつの選考基準としている場合があります。

 

顔採用のパターン:身だしなみや表情を見ている

顔から読み取れるものは、容姿だけではありません。顔を見ることで以下のポイントについても確認できます。

  • 清潔感
  • 髪型などの身だしなみ
  • 笑顔などの表情

顔から読み取れるこれらのポイントを評価することも、顔採用なのです。社会人のマナーとして清潔感を保つことや、身だしなみを整えることは大切ですし、社内外の人と接する際にも相手に気持ち良い印象を与えます。

また、無表情の人と笑顔の人では圧倒的に後者の方が「一緒に働きたい」と思われるでしょう。顧客のウケも良いため、顔から明るさや人あたりの良さを判断することは、まっとうであると言えます。

 

顔採用のパターン:顔つきを見ている

顔つきから、その人の姿勢や心持ちを読み取っている場合もあります。

たとえば、目に力がある人からは自信や挑戦心を感じ、本当にこの会社に入りたいんだということが伝わります。顔には、その人の内面的な部分も現れるのです。

 

顔採用は差別に該当しない?

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顔採用と聞くと、「外見で人を評価するのは差別にあたるのではないか」と考える人もいるでしょう。しかし、日本の法律や国の定義上、顔採用は差別ではないと言えます。その理由について整理していきましょう。

 

顔採用は法律では差別にあたると明言していない

人権や労働に関する主な法律としては、下記が挙げられます。

  • 労働基準法
  • 労働契約法
  • 男女雇用機会均等法
  • 雇用対策法

 

いずれの法律を確認しても、差別的な要素として外見をあげている条文はありません。

また、厚生労働省では採用や選考に関するマニュアルを公表しており、その中で基本的な考え方として下記のとおり定義しています。

  • 『人を人として見る』人間尊重の精神、すなわち、応募者の基本的人権を尊重すること
  • 応募者の適性・能力のみを基準として行うこと

参考:公正な採用選考を目指して p3|厚生労働省

 

やはり容姿による採用を否定する文言はありません。むしろ、外見的な要素が業務上重要な適性であると考えるならば、これらの条件は満たしていることになります。

さらに同マニュアルでは、採用選考時に差別の可能性がある事項として14の例をあげています。下の画像3は、マニュアル内の当該ページです。

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画像引用:公正な採用選考を目指して p6|厚生労働省

いずれの例にも、外見に関する言葉が出てきていないことが分かります。

 

性別で優遇することは違法になる可能性がある

外見を選考基準とすることは問題ありませんが、職業安定法や男女雇用機会均等法にて、性別における差別は禁じられています。そのため、容姿が整っている女性または男性を明らかに優遇するような採用は、違法になる可能性があるのです。

たとえば男女ともに募集しているのに、明らかに顔が整っている女性のみを採用していれば、求職者から訴えられる可能性があります。

仮に顔採用を自社で取り入れようと検討しているのであれば、この点には注意してください。

 

顔採用の事例

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実際に、顔採用の実施を公に公開している企業があります。以下は、顔採用を大々的に実施している2つの会社の選考内容です。

顔採用の事例:伊勢半グループ

大手化粧品メーカーの伊勢半グループでは、2020年度4月入社の新卒を対象に顔採用を開始しており、ホームページなどでも大々的に宣伝しています。

顔採用といっても容姿を評価する訳ではなく、「好きなメイクで自分を表現してもらう」という内容です。自由な発想と表現力が求められる、まさに化粧品メーカーならではのユニークな手法だと言えます。

この採用方法は大好評で、なんとエントリー数が前年の2倍に膨れ上がりました。優秀な人材の確保と、企業としての認知度アップに繋がっています。

 

顔採用の事例:東急エージェンシー

広告代理店の東急エージェンシーでは、2016年度新卒採用で顔採用を実施して話題となりました。

東急エージェンシーの顔採用も容姿が整った人を優遇したものではありません。PCのWebカメラを利用した独自の顔分析システムで顔をタイプ分けし、結果ごとに特典を受けられるという、独創的なものです。

たとえば「のんびり顔」と分析された人にはエントリーシートの締め切り延長、「心配性顔」と判定された人には面接時間5分延長といった特典が付きます。

 

容姿そのものを選考基準と明言している会社はない

実際に面接を受けた求職者や企業の内情を知る人から、容姿そのものを判断して社員の採用をしているだろう、と言われている企業はあります。

しかし実情としては、容姿そのものを評価対象として明言している会社はありません。

 

顔採用が企業にもたらすメリット・デメリット

顔採用ではその人の内面や社会的マナーも見れることから、一般的に公開はしていないものの、選考方法のひとつとして実施している企業は他にもあります。

ここからは、顔採用を導入することによる効果を具体的に見ていきましょう。顔採用による会社へのメリットとデメリットは下記のとおりです。

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顔採用のメリット:職場の士気があがる

顔採用では、容姿だけでなく、表情や顔に現れる内面的な部分も見ていると述べました。内面的にも優れた社員がいることで職場の雰囲気が良くなり、結果として全体の士気が上がるのです。

 

顔採用のメリット:顧客への印象が良い

顧客に良い印象を与えられるかどうかは、集客や案件の獲得において非常に重要です。外見的なイメージは、相手に良い印象を与えるための大切な要素であり、結果として会社の利益にもつながります。

 

顔採用のデメリット:採用のミスマッチが起こる

業務上必要な知識やスキルが不足していることにより、ミスマッチが起こりやすくなる可能性があります。これは、極端に能力や内面的なものに目を向けずに、容姿重視で採用する場合に発生しやすいです。

さらに、業務面での度重なるトラブルは、職場内の不和を招く可能性があります。結果として採用後短期間で退職してしまうこともあるため、定着率やコストの面でもデメリットが大きいでしょう。

 

顔採用のデメリット:人によって採用基準が変わる

顔採用は、明確な基準が設定されていないことが多く、人よって評価の度合いが異なります。

採用に一貫性がないことは、求職者側から見てもマイナスポイントです。近年は人材不足が叫ばれているため、基準が不明瞭な採用は中長期的に見ても企業への損害になりかねません。

 

顔採用が行われやすい業界は?

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業務の性質上、顔採用が行われやすい業界があります。ここからは、容姿が選考に影響しやすい仕事とその理由を見ていきましょう。

顔採用が起きやすい業界:美容

美容業界は、「美しくなりたい」「カッコ良くなりたい」などの気持ちで商品やサービスを求めるお客さまが多いため、社員の外見的イメージが大きなメリットになるのです。

たとえば、化粧品を勧めてくれたスタッフの肌が美しければ、説得力や商品への関心が高まります。美容業界では、社員の外見が売上に影響しやすいのです。

 

顔採用が起きやすい業界:アパレル

アパレル業界では、おしゃれさや華やかさを前面に出す必要があるため、顔採用が行われることがあります。

お客さまも「この人のようにおしゃれになりたい」と言う気持ちから商品を買うことが多いため、販売者の外見的イメージが売り上げにもつながりやすいのです。

 

顔採用が起きやすい業界:航空

利用者と接することが多い航空業界では、子どもからお年寄りまで幅広い年代の人が利用するため、相手が安心するような人あたりの良さと顔つきが大切です。

また、上部の収納棚に手が届く必要があるため、ある程度の身長が必要な場合もあります。全体的に長身でスラっとした人が多いことが外見の良さに繋がっている部分もあるでしょう。

 

顔採用が起きやすい業界:マスコミ

メディア関連は、テレビなどを通して人目につく機会が多いため、外見が重要視される傾向にあります。

特に、アナウンサーなどのメディア露出が多い仕事は、この傾向が強です。近年はアナウンサーとタレントの境界線が無くなっていることも、ひとつの要因と言えます。

 

顔採用が起きやすい業界:広告

広告業界は、商品やサービス、企業のイメージを、広告を見た人に印象付けることが重要です。そのため、華やかさや見栄えの良さが重視されることがあります。

また、企業のイメージに近い人物が採用されることも多いです。

 

顔採用が起きやすい業界:受付

企業を訪問した際に、最初に接する人が受付である場合は多いですよね。「受付=企業の顔」として認識されやすいので、容姿が重視される傾向にあるのです。

 

顔採用への対策

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顔採用は容姿だけを見ている訳ではないといっても、選考にどう影響するのかが不安な人は多いでしょう。そこで、ここでは顔採用への対策を整理します。この記事を見ている人が人事担当者であれば、下記のポイントはひとつの選考基準となるため、是非参考にしてください。

顔採用への対策として重要なポイントは下記のとおりです。

  • 身だしなみを整えて清潔感を出す
  • 笑顔で話す
  • 相手と目線を合わせる
  • 背筋を伸ばし、良い姿勢をキープする

 

「見た目の良さ」というのは人によって基準が違いますが、「良い雰囲気」「良い表情」は誰もがプラスに受け止めます。上記のポイントは、間違いなく相手に良い印象を与える要素です。是非、顔採用への対策として意識してください。

 

内容を吟味すれば、顔採用の導入は有効

顔採用では、表情や身だしなみなど、様々なポイントが評価対象となります。企業にとってはメリットもあるため、内容をよく吟味しながらであれば、顔採用を導入するのもひとつも選択肢であると言えるでしょう。

また、本記事をご覧になっている人の中には、現在転職を考えている人もいるかもしれません。顔採用を含めて、企業がどのような選考を行っているのか、事前に情報を仕入れて対策を取りたいですね。

Back Office Magazine
紺野 天地
記事の作成・監修者 紺野 天地
フリーランス/高等学校教諭一種免許状(保健体育)

フリーランスのライター。国立大教育学部卒。地方公務員として4年間人事労務を担当し、民間企業(発達障がい児支援)に転職。1年間の勤務後、文章を通して人の行動や価値観を広げるきっかけを作りたいと考え、フリーライターへの転身を一念発起。現在はオウンドメディアの記事作成をメインに、形態を問わず執筆活動をしている。得意ジャンルは、経歴を活かした人事労務、教育、転職、働き方、スポーツなど。https://twitter.com/amatsuchi10

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