経理・税務

経理職の女性の平均年収は?|キャリアアップの方向性を解説

経理職の女性の平均年収は?|キャリアアップの方向性を解説

一般社団法人人材サービス協議会の「転職賃金相場2020」によれば、経理は専門性が求められる職種です。30歳前後の正社員、スタッフレベルの経理職の年収は300~399万円。平均年収は、企業規模や雇用形態、勤続年数、スキルなどによって差が生じます。この記事ではほかのバックオフィス部門である人事や法務、財務との仕事内容・年収の比較、管理職になったときの年収、キャリアアップの方向性などについて解説します。

企業で働く経理の仕事内容と女性の平均年収

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経理は企業の規模の大小を問わず必要不可欠な職種です。一般事務職と異なり、簿記などの専門的な知識やスキルが必要なため平均年収は高い傾向にあります。まずは経理の仕事内容を説明したうえで、年収差の原因となる男女差や勤務形態、キャリアアップの可能性について解説します。

企業における経理の仕事内容

企業経営の基礎となるのが、企業活動の成果を現す数字の把握です。製造や販売などありとあらゆる企業活動は最終的に数字に置き換えられます。このような企業活動の数字に関わるのが経理の仕事です。交通費の精算などの小さな仕事から関連会社をふくめた連結決算書の作成まで、段階を踏んで多岐にわたります。

担当者レベルの業務

企業規模によっても異なりますが、営業事務の仕事と重複することもあります。

  • 小口現金管理
  • 旅費等精算業務
  • 売上伝票・仕入伝票入力
  • 請求書発行
  • 預金管理
  • 支払処理および買掛金管理
  • 入金処理および売掛金管理
  • 月次決算補助

リーダーレベルの業務

企業ごとに業務担当範囲はさまざまですが、ひとつの取引が積み重なった結果をまとめる力が必要です。

  • 手形(でんさい)管理
  • 売掛金残高照合
  • 買掛金残高照合
  • 資金収支表作成
  • 借入金管理
  • 原価計算
  • 月次~年次決算書作成

マネージャーレベルの業務

マネージャーレベルの業務は日商簿記2級の知識では対応できない業務もあります。全社的に見渡せる視野の広さが求められるでしょう。

  • 会社法にもとづく決算書作成
  • 連結財務諸表作成
  • 不良債権洗い出しおよび整理
  • 減価償却手続き
  • 税務申告

経理の将来性について知りたい方はこちらを参考にしてください。

経理職の平均年収の男女差は?

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男性の経理職の平均年収は、同じ40代で400万円程度となっており、女性よりも約100万円高いのはなぜでしょう。それは、女性の経理は派遣社員やパート・アルバイト勤務の人などが多いからだといえます。経理の業務は細かく分けやすいため、副業としても取り組めます。

男女雇用機会均等法があり同じ業務であれば待遇差はないはずです。ですが、株式会社帝国データバンクによると女性管理職の割合は7.5%と、目標値30%にはおよんでいないのが現状。40代ともなると役職面において男女の差が現れてくるのでしょう。

勤務形態による年収差と男女差

doda 女性の転職・求人情報Woman Career(ウーマン・キャリア)によると、転職エージェントに登録する正社員の平均年収は、40代女性が400万円程度、全体では500万円程度となっており、やはり男女差があります。また、平均年収は経理女性よりも100万円ほど高く、経理職女性のメリットが見えてきません。

経理の派遣社員の場合、たとえば時給1500円であれば年収は(1500円×7時間×22日)×12カ月で、277万円です。パートやアルバイトは派遣よりも時給が低く設定されていたり、夫の扶養家族の範囲内で働いたりするケースがあり、女性経理の平均年収を押し下げる要因になっているといえるでしょう。

一般社団法人人材サービス協議会の「転職賃金相場2020」によれば、20代後半~30代前半で役職なしの担当者レベルの経理・財務職における年収は300~399万円と幅があります。

経理の女性の平均年収とかなりの開きがみられるのは、やはり勤務形態による年収差が大きいことに起因しているといえます。実力主義にもとづく管理職登用があれば、経理に関していえば男女差はないでしょう。

年収の計算について詳しく知りたい方はこちらを参照してください。

女性もキャリアアップできる?

一般事務職の平均年収よりも、専門的な知識が求められる経理職の女性の平均年収は高いとはいうものの、役職なしのスタッフレベルでは転職サイトに登録する30歳女性正社員の平均年収の365万円におよばないのが現状です。この年齢の全体の平均は414万円で、30代の女性は結婚、子育てなどの事情を背景に平均年収の伸び悩みが見られます。

39歳の女性の平均年収が394万円であるのに対して、全体では485万円となっており、男性との開きが大きくなっていると分析できます。ですが、子育てをしながらでもキャリアアップに挑む女性は、全体の平均に近いレベルに到達できるでしょう。

転職賃金相場2020」によれば、20代後半~40代の経理のリーダー候補や経営分析の担当者になれば400~599万円の年収です。経理職の経験を積み、経理だけでなく財務の知識やIRなどの3年以上の経験が求められます。資格は簿記2級以上で、海外取引などにも対応できる英語力があれば心強いです。

さらに、経理部の課長やリーダーになり、上場企業で働いた経験や管理職に就いたことがあれば、30代~40代前半で600~799万円のレベルに到達可能です。企業風土によって女性が部長になるのは難しい場合はあるものの、長期的に見ればキャリアアップによって年収700万円をめざせます。

キャリアアップに挑戦する過程で得た経験や知識は、いったん退職しても復職したときに役立つはずです。知っておきたいのは、経理の女性がただ同じ業務をルーティーンで長年続けても年収アップは望みにくい、ということ。キャリアアップを意識して取り組みましょう。

経理以外のバックオフィス職の仕事内容や平均年収の比較

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企業の職種は直接顧客と接する営業や企画といったフロントオフィスと、オフィスにおいて後方支援に従事するバックオフィスに大きく分けられます。経理はバックオフィスですが、そのほかに人事や法務、さらに経理と金銭に関する共通の部分がある財務があります。それら職種の平均年収は気になるところです。

ただ、平均年収は性別、年齢、企業規模、勤務形態などによって大きく変動します。こちらでは、2020年に転職サービスに登録した人の平均年収をもとに解説します。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によって、働き方が大きく変わった年でした。

そんななか、転職サービスdodaによると、全体の平均年収は409万円で前年よりも1万円アップしています。経理職の平均年収は509万円で、全体平均よりも100万円多いです。

人事の仕事内容と平均年収

人事の仕事は企業で働く社員を支えることです。企業にとって必要な人材を採用し、潜在的な能力を引き出すための教育を行います。適材適所に人材を配置するための人事評価の仕組み作りや、働きやすい環境づくりに携わります。

人事の仕事内容

実務面の業務は、勤怠管理や、給与計算、社会保険事務、入退社における手続き、健康診断や予防接種の実施、社員教育のためのセミナー開催などです。経理とも給与計算などの部分で大きく関わっています。

人事職の魅力は、企業において社員一人ひとりと直接関わり、個人の力が企業経営に反映されるのをつぶさに見れることでしょう。「人間力」が試される仕事でもあり、組織運営という仕事を通じて企業経営に関われている実感が得られます。

人事の平均年収

経理職が常に向き合っているのは数字です。人事職はまったく異なり、人の成長を見守る喜びがあり、また臨機応変に対応する能力が求められます。また経理と同様、人事も社会保険や労務管理の専門的な知識が求められる職種で、平均年収は506万円となっており、経理とほぼ変わりません。経理に向いていないと感じる人は、若いうちであれば人事職への転職も選択肢のひとつになるでしょう。

法務の仕事内容と平均年収

バックオフィス職のなかでも特に専門的な法律の知識が必要とされる法務職。企業の内外と関わりを持ち、管理部門のなかでもやりがいがある、トラブルを未然に防いだり、解決したりする注目される業務に携われます。

法務の仕事内容

企業法務でいちばん多い仕事が、取引先との契約書等を作成したり確認したりする業務です。売買契約書や業務委託契約書は、企業活動において日常的に発生します。後々のトラブルを想定して契約書の文言を十分に確認するのが法務の役割です。

また社内規定の整備も重要な仕事です。企業には、就業規則や給与規定などさまざまな規定があります。企業が独自に定めるものですが、労働関係の法律に抵触していないか確認しなければなりません。労働基準監督署への提出もあり、経営者の立場を考慮しつつ従業員の権利を守る必要があります。

対外的に一般消費者からのクレーム対応や取引先との紛争・訴訟対応など企業の命運に関わる業務は特に重要です。顧客からの情報収集などにおいて個人情報保護法との照らし合わせなども行います。また、社内においては社員からのパワハラやセクハラの相談にのるのも大切な仕事です。

大規模な仕事として子会社設立、分社や会社合併などにも関わり、やりがいを感じられます。

法務の平均年収

法務の平均年収は、経理や人事を大きく引き離して、640万円となっています。法律的な判断を求められる場面が非常に多く、特に企業の行く末に大きく関与する知識や経験が求められるためでしょう。

法務の仕事に就くには法学部を卒業するか、法律に関連する行政書士や司法書士など資格を取得するかのいずれかが求められます。経理として仕事をしている女性が企業の中枢へキャリアアップするために法律を学び、配置転換を図るのも、年収アップの方法のひとつです。

財務の仕事内容と平均年収

企業の規模によっては、経理と財務の仕事が分かれておらず、経理のスペシャリストが財務を兼務する場合があります。経理と財務の大きな違いは、経理が過去のお金の動きをまとめるのに対して、財務は主に未来に向けてお金の管理をする点です。

財務の仕事内容

財務の業務の基礎となるのは、経理がまとめた集計表です。その点において、経理と財務は密接な関係があります。財務は企業の予算編成や資金調達を主に行います。企業は資金繰りが悪化すれば、黒字でも倒産する危険性があるため、資金調達は非常に重要です。

資金調達は、金融機関からの借入や株式発行によってなされますが、一方で製造コストや人件費などの経費面に着目して、資金を調整する役割も担います。現状維持をするだけでも大変な仕事ですが、企業買収や子会社設立などのときには、大きな力を発揮することが期待される職種です。

財務の平均年収

財務の平均年収は568万円で、経理の506万円を大きく上回っています。経理は過去のお金の動きを確実にまとめる仕事で倒産の危機などのリスクとは直接関係ありません。ですが、財務が判断を誤れば、企業経営に多大な損害を与えかねない事態を招く可能性があります。

その責任の重さを裏返せば、やりがいに繋がります。経理と財務は過去と未来といういわば裏表の関係です。経理のキャリアアップのために、財務をめざすのはいちばん理にかなっているといえるでしょう。

経理の女性が平均年収アップするための方向性

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経理は女性が活躍しやすい職種です。こつこつと正確に数字を積み上げていくための丁寧さや根気強さは一般的に女性が得意だといえるでしょう。ただし、そこに安住していれば、平均年収アップは望めません。企業内でキャリアアップを図るか、あるいは転職を試みるか、平均年収アップのためには何かのアクションが必要です。

女性が経理としてキャリアアップするためのポイント

現在勤めている職場でキャリアアップをするためには、「担当者レベル」であれば「リーダーレベル」を、「リーダーレベル」は「マネージャーレベル」をめざすことになります。より専門性の高い業務に部分的にでも関わっていけるように、スキルアップして組織内で希望を積極的に伝える努力が重要です。

スキルを身に付けて磨く

キャリアアップしたくても何の裏付けもなければ、希望はかないません。客観的に判断できるスキルを身に付けるのが、アピールするために必要です。ただ資格をとるだけではスキルを身に付けた、とはいえません。仕事のなかで資格取得で学んだ知識を活かして自分から積極的に業務を改善します。さらに経験を積んでスキルを磨きましょう。

日商簿記2級の取得は、3級しか持っていない人にとって必須です。また税理士試験の科目合格のために、決算申告業務の補助からはじめるのもいいでしょう。海外取引のある企業で働いている人はTOEICや中国語を学ぶのも選択肢に入ります。まずは、どんな人材が求められているかを冷静に分析して、一歩ずつ着実に進んでいってください。

マネージメント業務をめざす

女性管理職をめざす場合は、業務を遂行するスキルと同時にマネージメント能力が問われます。マネージメントの前段階として、後輩の教育や組織全体の業務改善などに取り組んで、会社からの信頼を得ることが大切です。経理は他者とのコミュニケーションの少ない職種ですが、自分の仕事だけでなく、先輩や同僚、後輩の仕事にも興味を持ちましょう。

また、他部門と協力しあうプロジェクトや会社行事などにも積極的に参加することで、他部門の人との交流が生まれ、ほかの道が拓ける可能性があります。

法務や財務などの他部署に異動する

現在の経理の業務と人が固定化しており、経理のスキルを身に付けたところで仕事に変化がなさそうなときや、マネージャーのポジションが動きようもないこともあるでしょう。そのようなときは、思いきって法務や財務など、経理よりも年収の高い部門への異動を考えるのも選択肢のひとつです。

法務や財務はよりスペシャリストとしての側面が強く責任が重い仕事である分、平均年収も高くなっています。法務へ異動するための法律関係の資格取得は、ハードルが高いですが女性が働くバックオフィス関連でのスキルとしては市場価値が高いといえるでしょう。

また財務は経理とお金の未来と過去、という関係があり、経理の集計結果が財務の仕事のベースになっているため取り組みやすい職種です。財務に求められる能力は、財務諸表の分析など会計全般を見渡せる力と、金融などのファイナンスの知識です。経理よりもより広い視野と緻密さを併せ持った人が役立つ人材になれます。

転職がキャリアアップの近道

社内でのキャリアップが難しく、経理の仕事を続けながら年収アップを図るための近道が転職です。平均年収を左右するいちばん大きな要因は、会社の規模と業界だといえます。経理はどのような業界であっても必要な職種であることが強みです。業界ごとの処理方法の違いはあったとしても、経理は「会社法」というルールに従う点において同じだからです。

ほかの企業に転職することで、担当できる業務の範囲が変わったり広がったりする可能性があります。またマネージメントを経験できるかもわかりません。企業規模の大きな会社や外資系に転職できれば、間違いなく年収はアップするでしょう。そのためには、社内でのキャリアアップをめざすときと同じようにスキルを身に付けて磨いたり、マネージメントの前段階にも積極的に取り組んだりして経験を積むことが大切です。

経理で転職するときの自己PRポイントについて知りたい方はこちらを参照してください。

経理の女性が年収アップするための選択肢はさまざま

平均年収は企業規模や業種によって大きく変わります。専門的知識が必要な経理の女性の年収は一般事務職よりも高いものの、担当者レベルでいる限りはなかなかあがってはいきません。社内でキャリアアップしたり、他部署に異動したりすることは可能ですが、状況によってはスキルを身に付けても役立たないケースがあります。そんなときは、思いきって転職するのが近道です。どうか年収アップのために、この記事を役立ててください。

Back Office Magazine
経理/人事/総務ライター・MITSUKI
日商簿記2級・公認会計士短答式試験合格

日商簿記2級取得後公認会計士試験にチャレンジ。短答式試験に合格後、経理/人事/総務の実務に就き、繊維系企業でキャリアを積む。大切にしているのは、法律改正など、変化し続ける経理の現場で小さな「おかしなこと」に気づくセンス。本業のかたわら20年以上にわたり小説を書き続け、ライティングテクニックを磨き、経理・人事・総務について現場でしかわからない「気づき」を発信する。

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