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基本給と手当の仕組み|数十万円の損を防ぐ基本給と手当の常識とは?

基本給と手当の仕組み|数十万円の損を防ぐ基本給と手当の常識とは?

基本給と手当の割合によって、支給される給与やボーナスの額は大きく異なります。
具体的に言うと、年間の総支給額が30万円以上の差が出る場合もあります。

ですから、基本給と手当の詳細については、会社に勤める方であれば必ず知っておくべき情報であるといえるでしょう。

そこでこの記事では、基本給と手当の理解に不安がある方に向け、下記を解説していきます。

  • 基本給と給与の違い
  • 手当の種類と支給の決まり事について
  • 基本給が低い場合のデメリット

など、必要最小限の知識を分かりやすく紹介。

記事を読むことで、会社から搾取されるリスクを避けることができます。

基本給と給与の違いとは?

まずは基本給と給与の違いについてしっかりと理解しておく必要があります。

この違いを知っておかないと、入社後に後悔するリスクが高くなるので注意しておきましょう。

基本給・・・手当や残業代などを除いたベースとなる賃金

給与・・・基本給に加えて手当、残業代、インセンティブなどを含んだ賃金

厳密な違いについては、所得税法28条にも記されています。

給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費収び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう

引用元:国税庁『法第28条≪給与所得≫関係

また、給与は金銭以外のものを指す場合もあります。

たとえば、労働協定の中で現物支給があるのであれば、それも給与の一部として扱われます。支給された現物が課税対象である場合は給与明細に記されるため、いくら課税されているのかはチェックするようにしておきましょう。

基本給に加えられる手当の一覧

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以下では、基本給に加えられる手当について少し詳しく紹介していきます。

どの手当を導入するかは会社によって異なりますから、あくまで一つの例として覚えておきましょう。

基本給に加えられる手当:家族手当・扶養手当

家族手当・扶養手当は、扶養の対象となる家族がいる人に支給される手当です。

一般的には、扶養する家族の人数によって金額が異なります。

しかし、以前は導入する会社が多かったのですが、現代では「扶養家族と仕事の成果には因果関係がない」という考えが一般的となり、支給しない会社も増えてきています。

基本給に加えられる手当:時間外手当・残業手当

時間外手当・残業手当は、労働協定に定められている就業時間を超えて労働した際に支払われる手当です。また、時間外手当・残業手当とは別に、固定残業代(みなし残業代)という手当もあります。

固定残業代とは、会社が毎月想定する残業代をあからじめ給与に上乗せする手当です。

基本給に加えられる手当:成果手当(歩合・達成手当など)

成果手当とは、仕事の成果に対して支払われる報酬です。

営業系の会社で導入されていることが多く、基本給よりも成果手当が多くつくような会社も少なくありません。

また、成果手当と類似した手当に「達成手当」というのもあります。達成手当は、会社が定めた目標数字を達成した際に支払われる手当です。

基本給に加えられる手当:通勤手当

通勤手当とは、会社から自宅間で公共交通機関を利用した際に支払われる手当です。

一般的には、会社から自宅の間で最も安いルートでかかる金額を手当として支給します。ただし、通勤手当の導入は義務ではないため、支給されない会社もあります。

とはいえ、ほとんどの会社で支給されているため、「通勤手当がない会社は少ない」という認識を持っても大丈夫です。

基本給に加えられる手当:BYOD(Bring Your Own Device)手当

BYODは、最近になってIT企業を中心に導入が進んでいる手当で、パソコンやスマホなどの私物を会社の業務目的で使用した際に支給されます。

支給される場合の例を挙げると、会社の業務で使用するアプリをプライベート用のスマホに入れている場合などが挙げられるでしょう。

基本給に加えられる手当:役職手当

役所手当は、主任や係長など、一定以上の役職に就任している人に支給される手当です。

役職手当に似た手当には「営業手当」「特殊勤務手当」などがあります。

なお、労働協定に「営業手当はみなし残業代として支給する」といった旨のことが記載されていない場合、労働基準法にのっとり会社側は残業代の支払いをする義務があります。

基本給に加えられる手当:資格手当

資格手当とは、会社が定める資格を取得している人にのみ支給される手当です。もちろん、会社によって支給対象となる資格も異なります。

たとえば、不動産会社なら「宅建(宅地見物取引士)」、金融系会社なら「FP(ファイナンシャルプランナー)といった具合です。

基本給に加えられる手当:住宅手当

住宅手当は、社員が支払っている家賃、住宅ローンの一部を助成する目的で支給される手当です。

最近では、「会社の最寄駅から3駅以内に住んでいる人」などと規定を設けたうえで支給する会社も増えていきます。

基本給に加えられる手当:皆勤手当

皆勤手当とは、会社が定めた稼働日において、一度も欠勤することなく勤労した人に支給される手当です。

皆勤手当と似た手当に、「精勤手当」というものもあり、違いは下記の通りとなっています。

皆勤手当・・・欠勤と遅刻が一度もない場合に支給される

精勤手当・・・会社が定める基準を達成した際に支給される

皆勤手当と精勤手当は、有給休暇を取得した場合でも受け取りの対象になります。

基本給に加えられる手当:地域手当

地域手当とは、東京や大阪などの都心部で仕事をする際に生活補助として支給される手当です。また、地域手当の他にも、

単身赴任手当
ハードシップ手当

というものあります。

単身赴任手当は、会社都合で単身赴任を命じられた際に支給される手当です。
ハードシップ手当は、海外勤務において治安や衛生面などの環境が悪い場所で勤務する際に支給される手当になります。

ちなみに転勤の際は、社員の負担を少しでも小さくするために「引っ越し手当」が支給される場合もあります。

基本給に加えられる手当:マイカー手当

マイカー手当とは、社員が自家用車を仕事に使用する際に支給される手当です。会社によってはガソリン代の他に、保険代やメンテナンス代を支給する場合もあります。

ただし、支給の範囲は会社によって異なりますから、マイカー手当を導入している会社にはあからじめ支給の範囲を聞いておくとよいでしょう。

基本給が低い場合に起こりうる大きなデメリット

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基本給が低い場合に起こりうる大きなデメリットは下記の通りです。

退職金の額が下がる
残業代が低く算出されてしまう
ボーナスが低くなってしまう
給与額が不安定になる

入社後の後悔を未然に防ぐためにも、上記の4つはしっかりと押さえておきましょう。
以下にて、順番に解説していきます。

基本給が低いデメリット:退職金の額が下がる

基本給が低いと、退職金の額が下がる可能性があります。なぜなら、退職金の額を算出する際、ほとんどの会社が基本給をベースにして計算するからです。

会社によっては計算方法は異なるのですが、多くの場合、「退職時の基本給(算定基礎額)×勤続年数ごとの係数×退職事由別の支給率」を基に退職金の額を算出します。

したがって、定年までの長期勤務を考えている方にとって、基本給の高低は大きな影響を及ぼすといえるでしょう。

基本給が低いデメリット:残業代が低く算出されてしまう

基本給が少ないと、残業代も低く算出されることがあります。なぜなら、残業代の計算方法は「残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率」とすることを労働基準法で定められているからです。

残業代は基本給が計算式に含まれます。そのため、他の手当と相対的に見て給与が低くなったりしないかを確認しておくことが大切です。

基本給が低いデメリット:ボーナスが低くなってしまう

ボーナスも、これまでに紹介した「退職金」「残業代」と同じように基本給をベースにして算出するケースが多いです。

たとえば、月額の額面が25万円で基本給が20万円だとした場合、下記のような計算方法になります。

20万円×3か月分×2回(夏冬)=120万円

そして基本給が25万円だった場合は下記のようになります。

25万円×3カ月分×2回(夏冬)=150万円

上記のように、基本給にわずかな差があるだけでも、年間の支給額は30万円ほど変わります。30万円あれば、ブルガリやオメガといった世界的有名ブランドの時計が買えてしまいますね。

したがって、会社の選択に迷った際は、基本給の高低を選択基準の一つとして持っておいた方がよいといます。

基本給が低いデメリット:給与額が不安定になる

基本的に、基本給が低い場合は達成手当や成果手当(インセンティブ)で補填されるケースが多いです。ですが、それらの手当は会社の意向で自由に操作できるため、場合によっては廃止になる可能性もあります。

そうすると月に支給される給与額も低くなりますから、あまりに基本給が低いと不安定と言わざるを得ません。

もっと言うと、年に2回支給されるボーナスも社会情勢の波を受けて減額することがざらにあります。実際、2020年のコロナウイルス感染拡大の影響を受け、ボーナスカットの被害を受けた人も非常に多いです。

また、この先さらに進む働き方改革により、残業や休日が減ることが予想されますから、残業手当が削減され、給与がより少なくなる可能性もあります。

基本給より手当が充実していることで得する一面も

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基本給が少なく、通勤手当の割合が高い場合は手取り額が増え、有利になることもあります。なぜなら、通勤手当は所得税の課税対象ではないからです。

手取り額は課税対象となる金額が減るほど増えますから、結果的に基本給が少ない方が得をすることになります。ただし、課税対象にならないのは立替払いの性質を持つ通勤手当に限られる場合が多いです。これに加え、通勤手当の場合でも10万円を超えると課税対象となるので注意しましょう。(BYOD手当を非課税とするかは要確認)

「具体的にどれくらい違うの?」と疑問に思った方は下記を参考にしてみてください。

基本給30万円の場合の所得税→8,420円

基本給が25万円で通勤手当が5万円の場合の所得税→6,530円

上記のようになり、後者が約1,890円支給額が高くなります。

年間で約2万2,680円違いますから、この差は大きいといえるでしょう。

基本給や手当は転職する前に要確認!

基本給や各種手当の有無により、給与は大きく変化します。

ですから、「応募する会社の基本給はいくらか」「どのような手当があるのか」などは必ず事前に知っておく必要があるといえます。

また精勤手当やBYOD手当など、会社の規定により支給額が異なる手当もありますので、内定を承諾する前には確認しておくとよいです。

「手当や給与については聞きづらい…」という方は、転職エージェントを利用するなどして、確実に情報を収集するようにしましょう。

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ライター山田
記事の作成者 山田
専業ライター

キャリアアドバイザー、マーケターなどの仕事経験を経て、現在はライター兼メディアコンサルとして活動中。都会に翻弄されっぱなしのかっぺですが、この実態のない大都会を、いつか見返してやろうと奮闘しています。https://twitter.com/0304_yamaktm

Back Office Magazine編集部
記事の監修者 Back Office Magazine編集部
hiqers株式会社

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