転職活動中や企業を退職する際には、さまざまな書類の記入や提出が必要になります。「多すぎてよくわからない」と尻込みする人も少なくありません。
しかし転職や退職を考えるのであれば、不足なく揃えることが必須になります。
そこで当記事では、転職活動中の必要書類、退職時の必要書類と受け取るべき書類、転職先に提出する書類など、状況別に概要や入手方法をまとめました。ぜひ参考にしてください。
転職活動中に提出する必要書類
転職活動中に提出する必要書類は主に次の3つです。
- 履歴書
- 職務経歴書
- 添え状
聞いたことのある書類ばかりだと思いますが、あらためてそれぞれの詳細を確認していきます。
転職の必要書類:履歴書
よく耳にする「履歴書」という言葉ですが、あらためて定義するとすれば、「これまでの自分の説明書」というイメージが近いでしょうか。企業は履歴書を通じて、「求職者と自社の相性はどうなのか」「自社の利益に貢献してくれそうなスキルを持っているか」などを判断します。
履歴書による書類選考は、いわば採用担当者との大事なファーストコンタクト。空欄を埋めるだけでなく「どう書いたら印象に残るのか」を考えることが大切です。
主に次の内容を記載します。
- 名前・生年月日・現住所・電話番号・性別(性別の記載欄が廃止されたタイプもあり)
- 学歴や卒業年月日
- 職歴や退職、過去の転職日
- 志望動機・アピールポイント
- 取得資格・免許
- 趣味・特技
- 家族構成
- 本人希望 など
履歴書は日本産業規格JISに規格されたテンプレートがあるものの、「必ずこの形で提出すべき」という決まりは存在しません。よほど奇抜なデザインでない限り、たとえ自作の履歴書でも提出は可能です。とはいえほとんどの場合は、市販のものや転職サイトの無料ダウンロードを利用するのが一般的でしょう。
ただしそれぞれに「経歴を強調しやすい」「志望動機を書く欄が多い」といった特徴があるので、アピールしたい部分が引き立つタイプを使うことをおすすめします。
効果的な履歴書の書き方については、「履歴書の作成手順とは?|履歴書の4つのポイントを詳しく解説!」の記事にて詳しく解説しています。
転職の必要書類:職務経歴書
職務経歴書とは、自分の職歴や仕事の成果を説明することに特化した書類のことです。企業は職務経歴書を通じて、「どんな仕事を経験してきたのか」「具体的に挙げた成果はあるのか」などを確認します。
自分のことをアピールするという点では履歴書と同じです。しかし職務経歴書の内容は「実務能力はどうなのか」という部分にフォーカスしています。担当者の印象に残る記載があれば「この人は会社に利益をもたらしてくれそうだ」と、仕事面での大きなアピールになるでしょう。
主に次の内容を記載します。
- 職務要約
- これまで勤めてきた企業の概要
- これまで勤めてきた企業での業務内容や役職
- これまで勤めてきた企業で挙げた具体的な成果
- 取得した資格や免許
- 自己PR(履歴書より詳細なビジネススキルなど)
職務経歴書も履歴書と同様に、必ずこうすべきというテンプレートは存在しません。レイアウトや書き方次第で個性を出せます。ただしこちらも、あくまで「企業に提出するもの」という認識を忘れないようにしましょう。
職務経歴書の詳しい内容については、「【経理必見!】職務経歴書の書き方を細かく解説!通過率を3割上げる方法とは?」の記事にて解説しています。
転職の必要書類:添え状(送付状)
添え状(送付状)とは、企業の採用担当者へ「郵送した書類の枚数や中身」を伝えたり、挨拶状の役割を果たしたりする書類です。具体的には次の目的のために提出します。
- 「誰が・誰に・何を・何枚」について簡潔に伝え、相手の作業負荷を軽減するため
- ビジネスマナーが身についているというアピールのため
- 採用担当者からの印象をよくするため(マイナスイメージを与えないため)
添え状を送らなかったからといって、書類選考の合否に直接かかわることはありません。しかし採用担当者がマナーを重んじる人物だと、少しだけマイナスイメージがつくかもしれません。逆に気遣いを評価する人物であれば、印象に残りやすくなる可能性があります。
主に次の内容を記載します。
- 日付・宛名・自身の連絡先や氏名
- 件名
- 頭語と時候の挨拶(前文)
- 応募の経緯
- 志望動機や自己PR
- 面接の申し込み
- 結びの挨拶
- 結語
- 同封書類の一覧
添え状を送るときは、「1枚以内」「サイズはA4」「一番上に入れる」などのマナーに気をつけましょう。
少なくとも書いておくことでマイナスになることはありません。応募する際は作成することをおすすめします。
【補足】企業やエージェントとやり取りする際のメールマナー
転職活動中は、企業の採用担当者や転職エージェントの担当者とメールでやり取りすることが多くなります。とくに採用担当者とやり取りする際は、基本的なメールマナーを守るようにします。
意識すべきメールマナーは次のとおりです。
- 24時間以内に返信する
- 簡潔でわかりやすい文章を心がける(私的メールではない)
- 過去のメールのやり取りは残しておく
- 件名は「用件・名前・Re残し」にしておく
- メールの内容は「宛先・挨拶・本文・締め・署名」にしておく
- 「御社は貴社」「了解は承知」というように正しい敬語を使う など
以下、簡単なメールの例文をご紹介します。
【件名】書類選考通過のお礼の件
○○株式会社< 人事部 〇〇様 お世話になっております。 貴社の求人に応募しました△△と申します。 この度は書類選考の合格のご連絡、誠にありがとうございます。 また、次回選考のご案内も拝読しました。 ご掲示いただいた日程のうち、以下の時間帯でご都合はいかがでしょうか。 ・10月11日(月) 面接開始13:00~ ・10月13日(水) 面接開始11:00~ 上記の日程でご確認・ご検討いただけますと幸いです。 ご多忙の折、大変恐縮ではございますが、何卒よろしくお願いいたします。 ========= 氏名 住所 電話番号 メールアドレス ========= |
退職手続きの必要書類
転職活動の末に内定が決まったり、退職してから転職活動を始めたりする場合は、勤務先の企業で退職手続きを行います。以下に記載した必要書類や準備物を揃えておきましょう。
退職の必要書類:健康保険被保険証
企業に勤めている場合、支給されている健康保険被保険者証を返却しましょう。企業が独自に健康保険組合を設立しているなら組合の保険証、そうでない場合は全国健康保険協会の保険証になります。
公務員の場合は、共済組合の組合員証を返却します。
退職の必要書類:企業から支給されたもの
退職する際は、これまで企業から支給されたものはすべて返却しましょう。例えば次のものです。
- 自分の名刺(企業によっては取引先からもらった名刺も)
- 社員証やIDカードなどの身分証明証
- 企業から現物支給されているもの(交通定期券や作業服など)
- 業務で使用していたデータや書類
もし企業の重要な機密情報を返さず、隠したままライバル会社へ転職した場合、「競業避止義務」の違反として訴えられる可能性があります。そもそも関係なく、トラブルなく返却するのがマナーです。忘れないようにしましょう。
【補足】退職時にもらっておく書類について
企業を退職する際には、転職先企業に提出する書類や失業保険の申請に必要な書類の発行を、退職する企業に申請しておきます。具体的には次の書類です。
- 源泉徴収票
- 離職票
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
しかし、企業によってはなかなか発行・返却してくれないところもあります。とくに離職票や源泉徴収票は退職する企業にしか発行できないため、取り合ってくれない企業とのトラブルになることも多いです。
とはいえ、離職票の発行は雇用保険法や労働基準法、源泉徴収票の発行は所得税法で定められた企業の義務です。もし企業が発行してくれない場合は、労働基準監督署や税務署などの公的機関への相談や、公的機関の名前を出した交渉を行いましょう。
転職先に提出する必要書類
転職して内定が出た企業へ入社する場合、税金や保険、そのほかの手続きを行うためにさまざまな書類の提出が求められます。スムーズに入社手続きを進めるためにも、あらかじめ確認して必要な情報を揃えておきましょう。
転職先に提出する必要書類:雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は、雇用保険の加入について証明するための書類です。雇用保険は仕事を失ったときの生活の安定や、就職活動の援助を目的とした給付を受けるための制度です。いわゆる失業保険や育児休業給付が、雇用保険の補償に当てはまります。
新卒として企業に入社した場合は、発行したあとにそのまま企業で保管していることが多いです。退職時に渡されるときまで、一切見ない人も珍しくないでしょう。
ただし、雇用保険に加入していない従業員には発行されていません。雇用保険の加入条件は次の2つともに該当することです。
- 31日以上引き続いての雇用が見込まれること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
雇用保険被保険者証は転職先へ提出します。もし退職して失業保険を受け取る場合は、ハローワークへの提出が必要です。もし紛失したり企業側が渡すのを拒否したりした場合も、ハローワークへ申請することで再発行できます。
なお、公務員は雇用保険には加入していないので、雇用保険被保険者証はありません。その代わりに、国家公務員退職手当法第10条に定められた手当が受け取れます。
転職先に提出する必要書類:源泉徴収票
源泉徴収票は、従業員(公務員)の給与に関する次の事項が記載された書類です。
- 1年間で企業から支払われた給与や賞与の合計額
- 1年間で納めた所得税額
- 1年間の課税所得額
- 扶養控除や配偶者控除などの各種控除額 など
源泉徴収票も転職先へ提出します。もし退職後に就職せず12月31日を迎えた場合でも、その年の1年間の所得や納税額を税務署へ報告する「確定申告」のときに使用するため、大事に保管しておきましょう。
転職先に提出する必要書類:年金手帳
年金手帳は、日本の公的年金制度に加入している者に、日本年金機構が発行する年金に関する証明書です。雇用保険被保険者証と同じく、発行時にそのまま企業が保管しているケースが多いため、退職時には返却してもらいます。
もし紛失しても再発行が可能です。申請先は日本年金機構に状況別で記載されているので、一度確認してみてください。
とはいえ、年金手帳は2022年4月より基礎年金番号通知書へ切り替わります。今後は年金手帳の提出が不要となるケースが増えると予想されます(所持している人はそのまま使用可能)。
転職先に提出する必要書類:給与振込届出書
給与振込届出書は、転職先から支払われる給与の振込先を申請する書類です。転職先の企業から渡されるので、希望の口座を記入します。企業によっては銀行を指定される場合があるので、新しい口座を開設する必要があるかもしれません。
転職先に提出する必要書類:扶養控除等申告書
扶養控除等申請書とは、扶養している家族の有無について企業に知らせる書類です。扶養控除を受けるために必要になります。また扶養家族がいない場合も、いないことを知らせるために提出しなければなりません。書類は転職先の企業から渡されます。
転職先に提出する必要書類:健康保険被扶養者異動届
健康保険被扶養者異動届とは、転職先で新しい健康保険に加入する際に、被保険者の家族について手続きするための書類です。扶養家族がいる場合は必ず提出しましょう。書類は日本年金機構の公式サイトよりダウンロードできます。以下のリンク先です。
参考:日本年金機構
転職先に提出する必要書類:入社誓約書(入社承諾書)
入社誓約書(入社承諾書)とは、転職先へ入社する際に企業の就業規則に同意した旨や、履歴書や面接試験の内容に嘘偽りがないことなどについて署名する書類です。転職先から渡されます。万が一、理不尽または法外な内容がないかどうかを同意前に確認しておきましょう。
転職先に提出する必要書類:身元保証書
身元保証書とは、もし重大な不始末によって大きな不利益を与えた場合に賠償責任を負うことを、本人ならびに身元保証人の名の下に保証することを証明する書類です。法的な提出義務はありませんが、ほとんどの企業で提出を求められます。
転職先に提出する必要書類:住民票記載事項証明書
住民票記載事項証明書とは、いわゆる住民票の内容のうち、企業が求める部分についてのみ記載した書類です。所轄の市町村区の役所で発行できます。コンビニ発行に対応している自治体であれば、コンビニでの取得も可能です。
そのまま住民票の提出でも問題ない場合も多いですが、プライバシー保護や個人情報の扱いについて考えると、企業が掲示した条件にしたがうのが望ましいでしょう。
転職先に提出する必要書類:免許証・資格証明書など
もし転職先が要免許・資格の業務であったり、履歴書に免許や資格を記載したりした場合は、その証明として免許書や資格証明書などの確認を求められることがあります。コピーなどの提出を求められた場合は企業にしたがいましょう。
退職後の転職活動を考えたときの必要書類や手続きについて
転職を考える人の中には、「退職してからゆっくりと転職先を考えたい」と思う人も少なくありません。ここからは退職した後に必要になる書類や手続について概要を説明します。
退職後の必要書類:前の会社から離職票を発行してもらう
退職したあとに失業保険の給付を受けるためには、ハローワークに離職票を提出しなければなりません。離職票の発行については企業がハローワークに対して手続きを行い、労働者に渡します。
前述のとおり、離職票の発行は法律で定められています。もし企業が発行してくれない場合はその旨を伝えるか、公的機関へ相談を行いましょう。
公務員で離職票がないという場合は、辞令の写しや退職証明書などを提出します。
退職後の必要書類:失業保険の申請を行う
ハローワークにて失業保険の申請を行うことで、国から一定の日数分の「基本手当」が受け取れます。受け取れる額は「雇用保険の被保険者であった期間」や「自己退職であったか会社都合退職であったか」、「年齢」、「特定理由離職者に当てはまるか」などによって変わりますが、範囲は90~360日分です。
もし病気やケガ、出産などが要因ですぐに働けない場合は、受給期間を延長することも可能です。所轄のハローワークに確認してみましょう。
ちなみに筆者の場合は、自己都合・約9年未満の被保険者期間・30歳未満という条件で合計約55万円でした。失業保険がどれくらいもらえるかの目安は、ハローワークインターネットサービスのページで確認可能です。
参考:ハローワーク インターネットサービス|基本手当について
公務員だった場合は、失業保険ではなく退職手当として受給します。
退職後の必要書類:健康保険や年金保険の切り替えを行う
企業を退職した場合、これまで入っていた健康保険や厚生年金保険を、国民健康保険や国民年金保険に自分で切り替えなければなりません。期限内に市町村区の役所で手続きを行いましょう。
健康保険に関しては、任意で退職前に加入していた保険制度を継続して利用できます。ただし企業と折半していた分の保険料はすべて自己負担になるため注意しましょう。
もし退職した後に配偶者や家族の扶養に入る場合も、対象の保険の扶養家族として入る手続きを速やかに行ってください。
退職後の必要書類:住民税の支払いを行う
これまで住民税の支払いを給与からの天引きで対応されていた場合、今後は自分で納付を行わなければなりません。所轄の市町村区から納付書が送られてくるので、役場の窓口やコンビニなどで都度支払いを行います。まとめて支払うことも可能です。
退職後の必要書類:年末を迎えるなら確定申告を行う
退職後も転職せずに無職のままであったり、個人事業主や法人として独立したりした場合は、その年の収入について確定申告を行わなければなりません。
これまでは企業が「源泉徴収」という形で所得税を徴収して納付したり、「年末調整」にて所得を申請してくれたりしましたが、退職後はすべて自分で税務関係の手続きをします。確定申告を行わないと「無申告加算税」として追徴課税のペナルティが与えられるので注意しましょう。
必要書類を知ってスムーズな転職活動を!
転職活動を行う際には、さまざまな書類の記入や提出を行います。
筆者も転職活動や退職時の手続き、失業保険の申請を行うときには戸惑いましたが、わからないときは役所への相談やネット上の情報を参考にすることで、問題なく進められました。
どれも複雑な計算や手続きは必要ないので、身構えずに1つひとつ揃えていきましょう。