「企業法務として働く際に必要な資格って何?」
「法務職ってどんな知識やスキルが求められるの?」
このような疑問をお持ちではないでしょうか。
本記事では、「企業法務として活躍したい!」とお考えの人に向け、
- 企業法務で活躍したい人におすする資格7選
- 未経験でも企業法務として活躍できる理由
- 企業が法務職に求める知識とスキル
などを紹介していきます。
まずは企業が法務職に求める知識やスキルを把握し、今あなたが取得するべき資格を明確にしましょう。取得するべき資格を把握したら、後は勉強をスタートさせるだけです。
企業法務は資格や経験がなくても目指せる?
未経験でも企業法務として活躍することは可能です。
なぜなら、法務の知識・経験を持った人材は大企業の役職といった安定したポジションに定着することが多く、転職市場には中々出てこないからです。
そのため、中小企業やベンチャー企業では、総務と法務を兼任する形で業務を行っている人もいます。そういった企業では、法務の知識に加え、マネジメントや人事経験など他のスキルを同時に求めているケースが多いです。
なお、大企業の場合、法科大学院修了生であれば、実務の経験がなくても採用してもらえる可能性はあります。ただそのケースにおいては、法務以外の業務も兼任する総合職として採用される可能性が高いです。
とはいえ、法科大学院修了生ではないとしても、面接や選考でポテンシャルが高い人材であると判断されれば、企業法務として採用してもらうことは可能です。ポテンシャルが高い人材というのは、ある程度の法知識に加え、「語学力・文章力が高い」「コミュニケーション能力が高い」などのスキルを持っている人材を指します。
また、未経験の人がポテンシャルの高い人材であることを示すためには、持っている資格をアピールすることも効果的です。企業法務と関連性の高い資格を取得している、もしくは取得に向けて動いていることをアピールできれば、転職のチャンスも広がるでしょう。
企業法務に求められる3つのスキルと知識
企業が法務職に求める3つのスキルと知識は下記の通りです。
- 契約・取引における対応力
- 知的財産に関連する知識とビジネス感覚
- コンプライアンスに関連する知識
むやみに資格を取得するのではなく、まずはどういったスキルや知識が求められているのかを把握しておきましょう。それぞれのスキル・知識については以下で詳しく解説していきます。
企業法務のスキル1.契約・取引における対応力
企業法務が任される主な仕事内容の一つとして挙げられるのが、法務に関する契約・取引です。法務契約には下記の業務が該当します。
- 売買契約
- 秘密保持契約
- 業務委託契約
これらの契約に加え、取引先と締結する契約のチェックも労務が行います。また、単に書類を作成するのではなく、企業が営む事業を理解し、「本当に必要な契約かどうか」「有利・不利」などを見極めることも重要な業務の一つです。
また、自国だけでなく海外でも事業を営む企業の場合、語学力も同時に求められます。とはいえ、ビジネス英語を流ちょうに話せる必要はありません。契約に際してのポイントを理解し、外国語で説明できる程度に話せれば問題ないでしょう。
企業法務のスキル2.知的財産に関連する知識とビジネス感覚
知的財産に関連する知識が求められるケースもあります。
知的財産に関連する知識とは、「特許契約」「高い専門性が求められる契約」などを行う際に必要となる知識です。法務は知的財産権を理解し、管理保全を行いつつ社外の取引先に活用することが求められます。
また、自社が有する知的財産権を守るだけでなく、他社・他人の知的財産権を侵害しないようにすることも企業法務の仕事です。加えて、企業法務は法的な観点から自社の事業戦略やマーケティングに関する意見を求められることもあるため、ビジネス感覚が必要となる場面もあります。
企業法務のスキル3.コンプライアンスに関連する知識
企業法務は、コンプライアンスに関連する知識を持っておく必要があります。
コンプライアンスとは、法令遵守を意味し、企業が健全な経営を行う上で必要不可欠となる知識です。
企業法務は労働に関する法令や企業倫理などを深く理解し、従業員に浸透させる役割があります。なお、コンプライアンスを浸透させるために実施する研修やマニュアルの作成も法務職の仕事です。
企業法務に関連性の高い資格
企業法務と関連性の高い資格とその難易度は下記の通りです。
- ビジネスコンプライアンス検定 → 易しい
- 個人情報保護士 → 普通
- ビジネス実務法務検定 → 普通
- 知的財産管理技能士 → 普通
- 行政書士 → 難関
- 司法書士 → 難関
- 弁護士 → 超難関
以下では、「それぞれの資格のおすすめ点」「企業法務と関連性が高い点」などを解説していきます。
企業法務の資格:ビジネスコンプライアンス検定【難易度:易しい】
ビジネスコンプライアンス検定とは、企業活動をする上で必須となるコンプライアンス(法令順守)に関連した知識の取得を目的とした検定資格です。
ビジネスコンプライアンス検定を取得することで、得られる具体的な知識は下記の通り。
- コンプライアンス運営の理念とその目的についての知識
- ビジネスシーンに適したコンプライアンス行動に関する知識
- 企業が健全な経営をする上で必要となる行動と運営方法についての知識
コンプライアンスに関する知識は、上場を考えている(もしくは上場が控えている)企業にとって無くてはならないものです。ですから、この資格を持っている人材というのは、企業によってはかなり需要の高い人材であるということになります。
なお、ビジネスコンプライアンス検定には初級・上級の試験があり、初級・上級の合格率は70.9%(2019年実績)です。ビジネスマンであれば、初級の合格は容易でしょう。勉強時間に関しても、初級であれば1~2ヶ月程度とされています。
企業法務の資格:個人情報保護士【難易度:普通】
個人情報保護士は民間の資格で、2005年に施行された「個人情報保護法」に伴い設けられました。
この資格を取得することで、
- 個人情報の適切な管理方法
- 個人情報の安全な運用方法
などの知識を身に付けることができます。コンプライアンスと関連の高い資格であるため、先ほどのコンプライアンス検定と同じような位置付けだと考えて問題ありません。
個人情報の取り扱い方法は、健全な企業活動において必要不可欠な知識であるため、社員教育の一環として団体受験を行っている企業も多いです。そのため、企業側の認知も年々上昇しており、社会的な注目度も高くなっています。
個人情報保護士の合格率は35%前後とされており、1~2カ月程度の学習期間が必要だとされています。
企業法務の資格:ビジネス実務法務検定【難易度:普通】
ビジネス実務法務検定とは、ビジネスを営む上で重要となる「法令順守の基礎」「実践的な法知識」などの知識習得を目的とした資格です。
これまでに紹介した資格より難易度は上がりますが、法務職と関連性が高い資格であるため、転職の際には頼もしい武器になってくれることでしょう。実際、「ビジネス実務検定1級・2級を持っているか」を採用の基準とする企業も徐々に増えています。
ビジネス実務検定は1級、2級、3級の3つに分かれており、受験資格は特にありません。ただし、1級を受ける際は2級に合格しておく必要があります。
なお、3級の合格率は75.7%(2020年実績)、2級は43.4%(2020年実績)、1級だと17.2%(2019年実績)です。3級だとあまりアピールになりませんが、2級以上を取得していれば高い評価につながりやすくなります。
企業法務の資格:知的財産管理技能士【難易度:普通】
知的財産管理技能士とは、技術、デザイン、ブランドなどといった「知的財産」を管理し、適切に運営できることを公的に証明できる国家資格です。
- デザイナー
- 研究開発者
- クリエイター
などを抱えている企業が知的財産を管理(知財マネジメント)する上で必要となるスキルになります。
3級(学科)の合格率は67.6%(2020年実績)、2級の合格率は37%(2020年実績)と比較的簡単ですが、1級の合格率は10%程度だとされています。3級を合格するのに必要だとされる学習期間は2ヶ月程で、2級は3ヶ月、1級は10~12ヶ月程度の学習期間が必要だといわれています。
転職でアピールしたい場合は、少なくとも2級に合格しておくとよいです。2級に合格し、「1級の合格も視野に入れています」と面接で述べれば高評価にもつながりやすいでしょう。
企業法務の資格:行政書士【難易度:難関】
行政書士とは、主に以下の業務遂行を公的に認められた国家資格です。
- 遺言書等の権利義務
- 事実証明や契約書の作成
- 許認可等の申請書類の作成および提出手続の代理
上記の通り、行政書士も法務職と関連性の高い資格の一つなのですが、基本的に独立開業が主な選択肢になります。
また、企業側も行政書士を重要な資格だと捉えていないケースが多いです。どちらかと言うと、行政書士を取得していることより、実務経験を有している方が企業から見て高い評価につながりやすい傾向にあります。
企業法務の資格:司法書士【難易度:難関】
司法書士とは、主に下記の業務遂行を公的に認められた国家資格です。
- 不動産や法人登記の代理(もしくは供託の代理)
- 裁判所や法務局などに提出する書類の作成
これらに加え、司法書士資格の取得者は、簡易裁判所における「民事訴訟」「和解」「調停」などの当事者を代理する権限も有します(一定の制限あり)。
ただ、ご存知の人も多いと思いますが、司法書士は合格率3%前後の難関資格となっており、およそ3,000時間程度の学習時間が必要であるとされています。法的な知識を一切持っていない人であれば、数年以上の学習期間が必要になるでしょう。
また、司法書士も基本的に独立起業、もしくは司法書士事務所で就業することが多く、企業で働いている人はまだまだ少ないです。企業側も「司法書士は登記を専門に行う人」というイメージを強く持っているため、転職にあたってもあまり高い評価を得られないのが現状となっています。
ですが、「国から認められた業務内容の広さ」「法知識の専門性」などを上手く面接等でアピールできれば、企業への転職でも良い評価を得られるでしょう。
企業法務の資格:弁護士【難易度:超難関】
弁護士資格を所有することで、法務全般の業務遂行が公的に認められます。また弁護士の業務領域は広く、先ほど紹介した司法書士や行政書士が行える業務を一部遂行することも可能です。(一定の条件あり)
弁護士こそ法律事務所や開業のイメージが強いですが、最近は企業内で仕事に従事する弁護士が増加傾向にあります。日本組織内弁護士協会の調べによりますと、2007年は188人だった企業内弁護士も、2020年には2,629人が企業内弁護士として登録しており、総数にして4万2,135人となっています。
参考:日本組織内弁護士協会『弁護士会別企業内弁護士数の推移』
4万人を超える規模から見て、弁護士が企業に務めることは代表的なキャリアパスの一つであるといえるでしょう。実際、司法修習終了後に法律事務所へ就職せず、企業に入社する司法修習生も増えています。
ただし、弁護士資格の合格率は29.1%前後(2018年実績)となっているため、3年間みっちりとした学習期間を設ける必要があります。さらに合格後、弁護士になるためには司法研修所で約1年の司法修習を修了しなければいけません。また受験資格もあり、「法科大学院過程の修了」「司法試験予備試験の合格」のどちらかをパスすることが条件となっています。
企業法務の資格は自身に合ったものを選ぼう
本記事では、企業法務を希望する人におすすめする資格を7つ紹介してきました。
どれも法務に関連する資格ではありますが、進みたい将来によって取得するべき資格は異なります。
たとえば、企業外から法務としてサポートをしたい人は「行政書士」「司法書士」「弁護士」といった資格の取得が向いています。一方、企業内で活躍したい人は「ビジネス実務法務検定」「ビジネスコンプライアンス検定」などの取得が向いているといえるでしょう。
また「すでに働きたい企業や業界が決まっている」という人は、企業が求める人材から逆算し、取得したい資格を決めてもよいです。
したがって、闇雲に資格の勉強を始めるのではなく、まずは自身の将来を考えた上で取得すべき資格を選択しましょう。