「いくら頼んでもお客さんの資料がこない」
「お客さんにもっと営業したい」
そう悩む新人の税理士・税務スタッフは多いのではないでしょうか。
『令和改訂版 フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』はその名の通り、「フリーランス」と呼ばれる個人事業主のための税務などを解説する本です。
さらに面白いのは、この本にフリーランスの税金などの疑問や悩みがみっしり詰まっているところ。
著者であり、自身もフリーランスである、きたみりゅうじさんの
「こんなこと知らないよ・・・でも知らないじゃ済まないか」
という税金の難しさと真摯に向き合う気持ちがとにかく伝わってきます。
そのため、税理士事務所で働く人、特にお客さん経験の少ない新人にとって、個人事業主が何を考え、何に悩むのかを理解する良い資料になります。
顧客をよく理解することで、愛される税理士・売れっ子税理士への一歩を踏み出せるでしょう。
また新人の経理マンの方も、フリーランスというビジネスの最小単位を知り、全体のお金の流れ、税務の流れを把握する意味でおすすめできる一冊です。
『令和改訂版 フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』で得られること
フリーランスや個人事業主、自営業など呼び方はさまざまあれど、まず悩むのは売上。次に悩むのが経理や税金などのバックオフィス関連でしょう。
フリーランスの実態をまとめた『フリーランス白書2020』では、「働き方の課題」として「経理などの庶務・バックオフィス作業が煩雑」と答える人が全体の36.3%もいました。
そのようなフリーランスの抱える課題について、『令和改訂版 フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』では自身もフリーのライター・イラストレーターである、きたみりゅうじさんが税金や社会保険などについてまとめた一冊です。
フリーランスの多くは稼ぐ力はあっても、税金のことはよくわからない人も多いはず。
しかも税金の本や行政のサイトに書いてあることはわかりづらい。「で、結局どうすれば良いわけ?」とぼやきたくなる人も多いでしょう。この本はそんなフリーランスにとって、最適なガイドブックといえます。
税金や社会保険の種類から始まり、税金計算の手順など、税理士との対話形式でわかりやすくコミカルに説明されています。税金と聞いて身構える人もライトに読み進められる内容。さらに独立したフリーランスの他に、副業をしているサラリーマンなど、「ある程度自分で申告を進めたい」と考える人にとって魅力的な一冊です。
この『令和改訂版 フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』はフリーランスだけでなく、税理士事務所に勤める税務スタッフや1~2年目の企業の経理担当者にもおすすめです。
新人税理士・税務スタッフにおすすめな理由
税理士事務所などで働く新人の税務スタッフ・税理士におすすめな理由はとにかく「お客様の気持ちが理解できる」点。
税理士事務所で働く人の多くは税理士試験を経験した、「会計や税務に詳しい人」です。
税理士試験の勉強をしているうちに、会計や税務に詳しくなっていくのですが、逆に顧客とのギャップが広がることもあります。
ギャップとは、たとえば会計や税務の知識レベルです。当然、税理士事務所にいる人間は会計や税務に詳しいのですが、フリーランスの方々は詳しくありません。フリーランスの「わからないこと」を想像して、内容を理解してもらい、申告まで色々な提案や準備をしていく必要があります。
たとえば、青色申告の10万円控除と65万円控除(令和2年からは55万円控除)では、納税額に数万円以上の差が出ます。税理士などが65万円控除を狙って、フリーランスに資料を出してもらう際に、ただ
「○○の資料をください」
と言うのと、
「およそ〇〇円の節税効果があるので、○○の資料をください」
と言うのでは、顧客のやる気が違います。
税理士業界では常識だったとしても、知識のないフリーランスにとってはわからないことが多いです。自分の常識でものを言ってしまうと、大事な前提や説明を飛ばしてしまうことがあります。
当たり前のようですが、この相手との「知識ギャップ」を注意深く意識するだけで、顧客とのコミュニケーションコストが大きく減少します。
知識のギャップに加えて、新人の税理士・税務スタッフにとって一番大事なのは「お客様の困っていること」を理解すること。ときに目線を下げて、丁寧に聞き取りや説明をする必要があります。
しかし相手の立場に立っていなければ、どんなに説明しても顧客が納得してくれないこともあるでしょう。
D・カーネギーは著書『人を動かす』の中でこう語っています。
「他人にものを頼もうとするときには、まず目を閉じて、相手の立場から物ごとをよく考えてみようではないか。『どうすれば、相手はそれをやりたくなるだろうか』と考えてみるのだ。この方法は面倒にはちがいない。だが、これによって味方がふえ、よりより結果がたやすく得られる」
『令和改訂版 フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』ではときにコミカルに、著者のきたみりゅうじさんが税金や会計に歯ぎしりしている場面が描かれています。
それはもう字面から歯ぎしりの音が聞こえるよう。
このようなお金に悩む場面から
・個人事業主の会計や税務の知識レベル
・個人事業主が普段悩んでいること
・どういった言葉で説明すれば良いか
などを学べます。
税理士業も一つのサービス業であり、競争のある市場です。『令和改訂版 フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』にはフリーランスの顧客を理解し、よりよい関係作りやサービスの提供をする情報が詰まっているといえます。
経理担当者におすすめな理由
私が『令和改訂版 フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。』を1~2年目の経理担当者におすすめする理由は「仕事のイメージがしやすくなる」から。どんな仕事も全体像や目的をイメージできたほうが勉強になるし、成果につながりやすいです。
企業の規模にもよりますが、経理の1~2年目は「全社的な経理財務の数値をコントロールする」、というより「部分的な業務」が多いです。簿記の勉強をしつつ、伝票作成や会計システム・エクセルの理解を深めていく方が大半ではないでしょうか。
たくさんの処理をしているうちに
「あれ?これって何のためにしているんだっけ?」
と、自分の作業の意味を見失う方もいるでしょう。会社組織という大きなお金の流れのなかでは、全体像を把握しづらいことが原因にあります。
一方でフリーランスに代表される個人事業主はビジネスの単位としてはミニマム。所得税と法人税という違いはあれど、小さな単位のほうが年間を通じたお金の流れのイメージがつきやすいです。
この個人事業主というビジネスの最小単位を学ぶことで、企業経理全体のイメージに役立ちます。
「源泉徴収って何のためにやるの?」
「仕訳のたびに入力する消費税コードって何のため?」
といった日々の業務の意味などもよくわかります。また、この本では所得税の基礎を学べます。経理担当者が毎年やることになる年末調整についても、所得税のなかでどのような意味をもっているのかイメージがつけやすくなるでしょう。
フリーランスはまだまだ増える
統計によると、フリーランスの人口は増加傾向にあります。税理士事務所によっては今後、フリーランスの顧客を相手にする機会も増えることでしょう。「個人の客はちょっとなあ・・」という事務所も中にはありますが、個人からビジネスを大きくしていった例はたくさんあります。顧客を理解して営業につなげるマーケティングツールとして、一冊いかがでしょうか。