経理として転職するときの自己PRのポイントは、基本的な資格やスキルがどのような場面で役立ったか、いかに会社の価値を高めたかを具体的に伝えることです。
この記事では、主に選考に有利になる履歴書や職務経歴書への自己PRの書き方について、例文を交えながら説明します。AIに置き換えられない能力や強みなどのアピールポイントをしっかり伝えるための参考にしてください。
経理の自己PRで採用担当者に評価されるアピールポイント
就職するときに提出する書類のなかで、採用担当者がいちばん注目するのが「自己PR」です。経理職での転職で自己PRを書くときには、まず自分自身の「強み」を分析するところから始まります。
たくさんある「強み」のなかで何をいちばんの「推し」にするかを決めるには、応募する会社がどのような人材を求めているか?を知らなければなりません。
長く書けばよいというものではありません。本当に伝えるべきポイントが埋没してしまい、目立たなくなる恐れがあるからです。また、冗長な文章を書くと、経理以前に、社会人としての基本的な能力が低いとみなされる可能性があります。
中小企業と上場企業などの大企業では評価されるポイントが異なります。そこでまずは、会社の規模によって評価されるポイントの違いについて見ていきます。
「面接でもっと詳しく聞いてみたい!」と採用担当者が感じるような自己PRを目指しましょう。
経理の自己PRを中小企業にするときのポイント
中小企業では業務が分業化していないので、幅広い仕事を任されることが多いです。勤務してきた会社の規模や業界を明らかにして、以下のような経理の経験を具体的にアピールします。
- 会計ツールやシステムの導入や使用経験
- 資格を活かした業務の効率化経験
- 具体的な日次業務や月次決算、年次決算などの経験
- 決算での数値にもとづく経営者への提言
経理の自己PRを大企業にするときのポイント
大企業では、経理の業務が分業制になっているため、ひとりで決算に対応することは求められません。より高度な経理や会計の知識や経験が評価されるでしょう。大切なことは、AIでは対処できない「予期せぬ出来事」への対応力や他部署との連携などのアピールです。
応募する会社がどのような人材を求めているかを知り、ぴったりとマッチした経験があれば強みになります。ですが、まったく同じ経験を積めた人は少ないはずです。そのときは、今までの経験をベースに論旨を展開させて、マッチできる能力があることをアピールしましょう。
- 開示資料や報告書の作成経験
- 株式上場の準備や連結決算などの広範囲な経験と深い知識
- 新規事業の立ち上げでの他部署と連携した経験
- チームにおける部下の育成やルール整備などのマネージメント経験
- アウトソーシングの導入や社内の業務フローの設計や改善経験
上場企業について詳しい内容が知りたい方はこちらを参考にしてください。
経理スキルを履歴書で自己PRするには?
経理の自己PRをするときに、免許や資格、学歴や今までの職歴は、変えようのない事実です。また履歴書の「免許・資格」欄や「学歴・職歴」欄は、具体的に自己PRする前段階の見出しとも考えられます。自己PRにつながる履歴書を書くときのポイントを見ていきます。
経理の自己PR:履歴書の「免許・資格」欄の書き方
履歴書で採用担当者が見るポイントで自己PRにつながるのは「基本的なスキルがあるか」と「学歴や職歴が応募した会社に関係があるか」です。
経理は一般事務と異なり、経理や会計の知識や専門性が求められる職種です。「日商簿記」などの資格があることは応募の前提条件になる場合がほとんどです。経理の資格は、履歴書の「免許・資格」欄に記載します。
さらには、経理として役立つ「税理士」や「公認会計士」、「ファイナンシャルプランナー」などのより高度な会計業務を行うための資格や、WordやExcel、PowerPointなどマイクロソフトのオフィス製品を使いこなせることも忘れず記入しましょう。
経理の資格について詳しい内容が知りたい方はこちらを参考にしてください。
免許・資格欄で注意すべきポイント
「免許・資格」欄に資格を書いただけでは、積極的な自己PRになりにくいのですが、持っている資格をすべて書けばよいわけではないので注意が必要です。
たとえば経理として仕事をするときに「調理師」の資格は必要なさそうです。書けば「いったい何がしたいのかわからない人」という印象を与えるかもしれません。しかし応募先がレストランチェーンなどの外食産業の会社であれば、経理をするときに「食」に対する専門的な知識が役立つ可能性があるでしょう。
応募する会社によって、マッチする資格は何かを考えて、たくさんある資格のなかから何を記載すべきかを取捨選択することが大切です。
経理の自己PR:学歴・職歴欄の書き方
「学歴・職歴」欄には、具体的に「いつ」「どこで」学んだり仕事をしたりしたかを簡潔に書きます。正しい年月と正式名称を省略せずに記載しましょう。たとえば「高校」と省略せずに「高等学校」となります。
経理の自己PR:学歴・職歴欄で注意すべきポイント
職歴が多い人は、省略して最終学歴だけを記載してもかまいません。留学するための語学学校は、英文会計を行うときはアピールポイントになりますので、学歴欄に書くとよいでしょう。
職歴欄は正社員として働いてきた会社はすべて書くのがルールです。会社名だけでどのような仕事をしていたかわかりにくい場合は、事業内容を簡潔にカッコ書きで付け加えます。配属先や事業部門なども記入しましょう。
派遣社員として働いた場合はカッコ書きで付記します。アルバイトについては、長期にわたって働いた先で書くことが自己PRにつながるものに絞りましょう。繊維関係の会社に応募する場合は、アパレル関係の販売員の仕事経験が役立つ可能性があります。
【経理の自己PR】スキル・経験を職務経歴書でどう書く?
履歴書を深堀して実務能力や仕事に対する意欲、会社に有益さをもたらす強み、などを採用担当者へ積極的に自己PRするのが職務経歴書です。アピールするのは、経理としてのスキルと経験です。経験については、期間の長さもあわせて書くようにします。
自分で考え、言葉で伝えることが苦手な人がいるかもしれません。ですが、誰にでも今までを振り返れば、資格を得て変わったこと、経理として実際の職務経験を経て感じたこと、考えたことがあるはずです。
その結果、会社にもたらした具体的な成果は、自分だけの「強み」となります。
そのとき考えなければならないのは「応募する会社にとって有益かどうか」ということです。自己PRは自己満足であってはなりません。客観的な視点を持ち、自分自身を的確に分析してみましょう。
会社という組織で、経理に求められるものは何か、自分の価値はどこにあるのかを見定めることが重要です。そこを押さえれば、アピールするべきポイントが自ずと見えてきます。
経理の自己PR:スキルをアピール
経理として働くうえで持っているべき資格や知識などのスキルを職務経歴書でアピールします。経理に必要な簿記などだけではなく、取引先との間でかわす基本契約書を作成する場合もありますので、PCスキルについても自己PRしましょう。
大切なことは、自分で考えて工夫してきたオリジナルのスキルや経験です。それらのスキルや経験が応募先の会社で、どのように活用され貢献できるかの考察も簡潔に書きましょう。
【資格】
資格は履歴書に書いていますが、職務経歴書ではその資格が具体的にどのような業務に役だったか、あるいは今までの仕事で何をステップアップするために資格を取得したかを記載するようにします。
<例文>
○○株式会社で4年間経理業務に従事してきました。2年目に海外取引が始まり、国際会計検定「BATIC」の試験を受けて合格しました。語学勉強も継続中ですので、貴社でも貿易部門と連携しながら、業務に携われます。
使用できるソフトやシステム
経理が日常的に使う会計ソフトやシステムを具体的に使用してきた期間もふくめて書きましょう。応募する会社が同じソフトを使用していれば、大きなアピールポイントになります。自社独自のシステムなどの場合は、構築した過程などにも詳しく触れます。
中小企業では、業務の効率化にExcelを利用するシーンが多々あります。具体的に利用したシーンを書き、取り組んだことで時間がどれくらい短縮できたかを書きましょう。
<例文>
○○株式会社では、毎日の入出金の管理業務や月次決算、中間決算、年次決算などの決算書類の作成を行ってまいりました。会計ソフトは「勘定奉行」を入社から6年間使っています。また、会計ソフトに入力するための前段階の資料は、Excelで作成します。心がけたのは、Googleドライブを利用した経理チームでのリアルタイムでの情報共有です。
まずは、貴社の経理の進め方をしっかり学び分析して、前職での経理の経験や知識が活かせるように努めたいと思っております。
経理独自の知識
売掛金や買掛金も簿記にある勘定科目としての知識だけでなく、経理の現場でどのように管理していたかを具体的に書きましょう。「生きた」経理の知識を書くことで、しっかりと資格が身についていることをアピールできます。
またトラブルを事前に回避できた経験なども自己PRになるでしょう。
<例文>
株式会社△△では、経理担当者として売掛金と買掛金の管理を担当していました。売掛金は、毎月の請求金額と回収予定額をExcelで作成して、各営業担当者と連携しながら実際の入金額もリアルタイムで表に入力していました。
ある得意先が入金日に支払いがなかったのですが、その旨を営業担当に伝え、連絡してもらったところ、異なる会社に間違えて支払っていたことが判明し、得意先に喜ばれました。その経験を通じて経理という仕事は即時対応が重要であると学びました。
経理の自己PR:経験をアピール
会社の規模によって経理の職務範囲は大きく異なります。業務が細分化されており、当座や現金の入出金だけを担当している場合もあれば、会計ソフトへの入力業務から資金調達のための銀行との折衝や税務調査の立ち合いまで行う場合もあるでしょう。
応募先の会社がどのような人材を求めているかをしっかり見定めて、適する経験を選び、経験の豊富さや能力の高さを自己PRしましょう。
マネジメント経験をアピール
部下がいてチームで仕事をしていれば、マネジメントについての経験も大きなアピールポイントになります。自己PRでは、曖昧な表現は避けるようにしましょう。誇大表現しているようにも受け止められかねません。経験は詳細かつ具体的に書くことが重要です。
<例文>
株式会社××の経理課では部下が3人いました。それぞれの適正を知るために業務の割り振りを替えて、効率化を図るとともに、誰かが休んだときでも代わりのものが即時に対応できる体制を整えました。新しい業務は、最初は慣れずに時間がかかりますが、やる気につながることを経験しました。
正確さとスピードをアピール
経理の仕事で何よりも重要なのは、正確であることです。一つひとつの取引の数字が積み重ねられた結果が決算書ですが、どれほど多忙で入力などの作業が多くても、ミスは許されません。集中力を保ちながら、ミスなく業務を遂行できる能力は大きな自己PRポイントです。
しかし、人間のすることなのでミスは必ず起きます。的確にミスを発見できる仕組み作りの経験もアピールできるでしょう。
経理の自己PR:人間性をアピール
スキルや経験についてアピールするときに、さりげなく人間性が伝わるように自己PRすれば、好感度がアップするでしょう。経理も他部署との関係や、取引先と請求書や回収の件で関わる場合が多いので、やる気や几帳面さ、責任感、協働経験なども採用担当者にとって重要な見るべきポイントとなります。
職務経歴書の書き方について詳しい内容が知りたい方はこちらを参考にしてください。
経理の自己PRは自己分析能力を表現しよう
経理として就職するときの自己PRは、今までの仕事とどのように向き合い、取り組んできたかを客観的に分析するところから始まります。一つひとつの業務を細かいフローに分解して、アピールポイントを探すことが大切です。採用担当者は実際に携わった経験とともに、履歴書や職務経歴書における自己PRの書き方によって能力を見定めるでしょう。
仕事に真面目に取り組んできた人には、必ずアピールできる強みがあります。自分自身の能力や強みの棚卸しのためにこの記事を参考にしてください。