簿記の知識があると、
- 会社のお金を管理する「経理(財務)」の仕事に役立つ
- 新聞の経済面やニュースの数字を理解することができる
- 決算情報を理解し、株式投資の判断材料にできる
- 就職、転職の際に評価が高くなる
- などメリットがたくさんあります。この記事では、日商簿記2級の概要や、転職活動における簿記2級の生かし方について解説していきます。
簿記2級は経理への就職、転職に有利?
簿記2級は就職活動の武器になる
簿記2級は就職活動において、評価の対象になります。
新卒での就職活動は同じような経験をした人たちが横一線でスタートします。学生生活のエピソードは、勉強、部活、サークル、バイトなど似たものが多くなかなか差がつきません。
簿記2級は、長期間の勉強が必要ですので、保有していると、「コツコツと努力を続けられる人柄」を印象づけられます。面接で資格取得について話を振られれば、工夫した事、頑張った事をアピールできます。
中小企業では、即戦力と期待される資格ですし、大手製造業では入社後、簿記2級の取得を必須としている企業もあります。大きなプラス評価になることは間違いありません。
転職活動でも簿記2級はアピールできる
現代では転職は特に珍しい事ではなく、転職市場も大きくなりました。中途採用者に求めることは実務スキル、いわゆる即戦力採用がメインであることは変わりません。事業の拡大による要員増、急な欠員補充が中途採用の主な目的ですので、資格よりも実務経験が重視されます。
経理職では、実務経験3年以上が必要とされている募集が多いですが、活かせる資格として簿記2級の記載がセットになっています。実務に加え、簿記2級の資格があると知識の裏付けを証明することにつながり、転職市場でもアピール材料になります。
実務経験なしで経理への転職
経理に限らず、転職市場では即戦力が求められますが、大手求人サイトで「簿記2級 未経験」で検索すると100件以上ヒットします。「簿記2級」のみで検索すると300件程度ですので、3分の1の募集は未経験者でも応募可能と言えます。
経理未経験であれば、まずは簿記2級を取得し、未経験者可の企業へ応募して経験を積み、その後、経験と知識をセットにして人材紹介会社などを活用しながらキャリアアップを図っていくことが理想的な方法と言えます。
簿記2級を転職でアピールできる求人は?
簿記2級は、高度な商業簿記、工業簿記を習得し、幅広い経理の知識を有している「経理の即戦力」と見られる資格です。活躍できる求人を記載します。
簿記2級を生かせる転職:中規模程度の一般企業の求人
中規模企業の求人では、即戦力の簿記2級は高く評価されます。中小企業では、人材育成の仕組みが十分ではなく、教育はOJTが中心です。要員も十分配置されていないので、すぐに仕事を覚えて戦力になってもらう必要があります。
簿記2級の知識があれば、経理の基礎は身についていますので、一から教える必要がなく、教育に割く労力が少なくてすみます。
経理は比較的専門性が高く、聞きなれない用語も多いのですが、知識があるので躓くことなく早期に戦力化を期待できます。
上記から中規模程度の一般企業では評価の高い資格です。
簿記2級を生かせる転職:製造業の経理職の求人
製造業の経理において、工業簿記、原価計算の知識は必須です。簿記2級は工業簿記が試験科目にあるので、知識と技能を習得している証になります。
製造業の形態によって、原価計算の方法は様々ありますが、簿記2級では一通りの論点を学んでいます。
実際の経理実務では、原価計算は専用のシステムで行いますが、ベースの知識を保有している簿記2級保有者の採用ニーズは高いです。
簿記2級を生かせる転職:会計事務所の求人
会計事務所には、税理士事務所や公認会計事務所がありますが、簿記2級が必須または歓迎の求人はとてもたくさんあります。
会計事務所の主な仕事は、記帳などの経理業務代行、税務申告書の作成、節税対策等の経営コンサルティングなど多岐に渡ります。
簿記2級の知識があれば、記帳代行、税務申告などの即戦力になりえます。
簿記2級でスキルアップ、キャリアップ
経理職以外での簿記2級の利用価値について紹介します。営業職のスキルアップや管理職へのキャリアアップにも有効な資格です。
簿記2級で昇給・資格手当を狙う
企業によっては簿記2級の取得に対して、資格手当や取得にかかる費用を補助してくれる場合があります。
また財務諸表の数字から経営内容を把握できる知識もありますので、経営幹部や管理職への昇進へもプラスの効果が期待できます。
直接的な資格昇格要件にはなっていなくても、自らスキルを磨いている姿勢は高く評価されることは間違いありません。
営業職のスキルアップに簿記2級
意外かもしれませんが、営業職において簿記2級のスキルは役立ちます。
財務諸表の数字が理解できるので、取引先の与信管理をある程度は自分で行い、販売代金が回収できないなどの事態を事前に察知することができます。
経済ニュースを数字の面から理解できるので、取引先幹部との雑談でも広く対応できます。
簿記2級を管理職へのキャリアップに生かす
管理職の昇進には、マネジメントスキル、コンプライアンスの知識、そして企業会計の知識が必須です。企業の目的は収益の最大化ですので、管理職には経営者と同じ目線が欠かせません。簿記2級は「財務諸表から経営内容を把握できる」レベルの資格ですので、経営者と同じ目線で数字を見ることが出来ます。
自らスキルを磨く姿勢は、人事考課でも高く評価されます。
上位資格へのステップアップに簿記2級
簿記2級合格後、更なる上位資格へのステップアップも可能となります。どれも難関資格ですが、保有者の少ない希少資格ですので極めて高い評価を得られます。
日商簿記1級
簿記において最上位の資格です。商業簿記、工業簿記に加え、会計学、原価計算の2科目が加わります。簿記1級は、全国に支店や工場があり、子会社や関連会社を複数所有する大企業の経理を行うことができるレベルです。
設備投資の判断、利益が最大になる販売構成、予算実績差異分析など、経営判断のベースとなる重要な仕事を行います。
年2回行われる試験には、毎回1万人程度が受験し、合格率は10%の狭き門です。勉強時間は1000時間が目安と言われ、合格まで1年以上かかります。
ファイナンシャルプランナー
「お金」を扱う意味では、ファイナンシャルプランナー(以下、FP)も簿記2級からのステップアップの資格として有望です。
FPは「ライフプランニングと資金計画」「リスク管理」「金融資産運用」「タックスプランニング」「不動産」「相続・事業継承」の6つの分野を扱うお金のエキスパートです。
3級から1級まであり、銀行、保険、証券、住宅メーカーなど幅広い分野で役に立つ資格です。
中小企業診断士
中小企業診断士は経営コンサルタントとして認められた唯一の国家資格です。一次試験は7科目で、その中に「財務・会計」があります。
一次試験の他に口述試験などの二次試験があり、試験範囲も広く難関資格の一つです。
取得後は、企業内でのキャリアップ、転職、コンサルタントとしての独立開業などの選択肢があります。
税理士
税理士は税のスペシャリストとして「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」といった3つの業務について独占的に業務を行うことができます。
受験資格の1つとして、日商簿記1級があります。
必修科目である「簿記論」「財務諸表論」は簿記の論点とも重なる科目です。
5科目合格してようやく税理士になることが出来ますが、合格率は各科目とも10から15%となっており、公認会計士と並ぶ最難関の資格です。
公認会計士
公認会計士は、企業の監査業務が行える唯一の国家資格です。
受験資格の条件はなく誰でも受験することが出来ますが、短答式の試験が4科目、論文式が6科目もある超難関の試験です。学習時間は4000から5000時間と言われています。
簿記2級は私生活でも使える
企業と家庭では使うお金の額は違いますが、「お金の流れを管理する」点では簿記の知識は私生活でも応用できます。
結婚して、家族が増えたりすると、限られたお金でどうやり繰りするのかが重要になります。特に三大支出と言われる「教育資金・老後資金・住宅資金」は影響が大きいため、シビアに費用対効果を見極める必要があります。
低金利が続き、銀行に預けてもほとんど利息はつかないので、株などに投資する人が増えています。簿記2級の知識があれば、財務諸表を読んで企業の将来性を予測し、合理的な投資行動を行うことができます。
副業などで収入を得るなどしたときは確定申告が必要になる場合があります。レシートを整理し、費用を計上していく作業にも簿記2級があればスムーズに対応できます。
住宅購入では通常ローンを組みます。複利計算が理解できると、総支払額における利息の割合を自分で把握でき、繰り上げ返済の金額やタイミングを適切に判断できます。
簿記は、長い年月をかけて「お金を管理する仕組み」を作り上げた知識の結晶です。私生活へも応用し、上手にコスト管理ができるようになります。
日商簿記2級とは?どんな資格なのか?
簿記2級の試験について
「日商簿記」は日本商工会議所が実施している公的な資格です。他の簿記技能検定として、「全商簿記」「全経簿記」がありますが、一般に簿記と言えば「日商簿記」を意味します。
3級は商業簿記のみですが、2級は商業簿記に加え、製造業で使用する工業簿記が科目として加わります。試験時間は120分で途中休憩はありません。受験料は4720円、各商工会議所の指定場所で試験は行われます。合格には70%以上の得点が必要で、配点は商業簿記60点、工業簿記40点です。
商業簿記とは?
商業簿記とは、商品を仕入れ、販売する企業活動を記録することです。小売業や卸売業をイメージすると分かりやすいでしょう。お金やモノの出入りを記録する方法を「仕訳」と言いますが、商業簿記では商品売買だけではなく、有価証券、固定資産など様々な仕訳の方法を学びます。
工業簿記とは?
工業簿記とは、材料の仕入れ、製品の製造、販売する製造業の活動を記録することです。車メーカーや鉄鋼業などをイメージすると良いでしょう。製品の製造にいくらかかったのか?を計算する方法として、費目別原価計算、部門別原価計算などを学びます。
簿記3級と2級の違い
簿記3級は商業簿記のみの試験です。商品売買を中心とした記帳の知識を学びますので、小規模な小売店の経理のイメージです。社会人として知っておくべき一般的な基礎知識といった資格ですので、就職や転職でのアピールとしてはやや弱いです。
簿記2級は、本支店会計や連結会計の論点が加わり事業規模が大きくなります。また工業簿記が加わることで製造業における会計処理を学ぶことになります。イメージとしては中規模の企業、製造業を営む企業の経理業務になります。
中小企業では即戦力レベルの資格ですので、保有していると就職や転職活動が有利に進められます。
簿記2級取得に必要な時間とコスト
簿記2級は適切な勉強時間を継続すれば誰でも合格できる資格ですが、簿記特有のルールや借方貸方、勘定科目、仕訳など専門用語が多く、初心者は興味や理解が続かず挫折しやすい資格です。どれくらい勉強すれば合格ラインに到達するのか?目安としての勉強時間と学習方法について説明します。
簿記2級の合格率と平均的な学習時間
2級の試験は、2月、6月、11月の年3回行われ、1回あたり6万人程度が受験します。直近5年合格率は平均22.4%ですが、144回(2016年11月実施)は13.4%、146回(2017年6月実施)は47.5%とかなりばらつきがみられます。試験の論点によっては合格が難しい場合もあるので、合格まで何度かチャレンジする覚悟が必要です。
簿記2級に必要な勉強時間は、おおよそ250~350時間と言われています。毎日2時間勉強すれば半年で合格できる計算ですが、1回目が不合格だった場合は、次の試験まで3か月継続になります。合格率は25%程度なので、トータル500時間を想定するのが現実的です。
独学?専門スクール?効率的な学習方法とは
学習方法は、大きく2つに分かれます。市販の参考書で独学か、または専門スクールを活用する方法です。一長一短ありますので詳細を記載します。
市販のテキスト、参考書で完全に独学する方法
独学のメリットは、
- マイペースで勉強できる
- お金がかからない
の2点です。参考書と問題集で5000円、過去問題集は2000円、知識ゼロからであれば3級の参考書2000円程度を購入すれば十分です。合計1万円程度の投資で済みます。TACなど資格の専門スクールが出版している参考書がお勧めです。
一方、デメリットは、
- 参考書を読んでも理解できない時は、自力で解決する必要がある
- 進捗管理、スケジュール管理など全てが自己責任
が上げられます。
インターネットのサイトでは、独学の勉強方法や質問ができる掲示板があり、また関連するユーチューブ動画などもあるので、独学でも合格は可能です。ただ毎日2時間程度の学習を継続することは、全て自分次第となります。
専門スクールを活用する方法(Web講座)
教室の講義映像をインターネットで視聴しながら学習できるスタイルです。
メリット
- TAC、資格の大原など大手スクールの講義が視聴でき、理解しやすい
- インターネットなので時間に縛られない、2倍速で時短視聴できる
- 講義に合わせて学習が進められる
などがあります。
デメリット
- 7~8万円程度の費用がかかる
- Web講座の場合は光回線、Wi-Fiといったネット環境が必要
です。DVD講座もありますのが少し割高になります。
独学に比べると数倍の値段になりますが、プロの講師なので理解は圧倒的に早く進みます。場所や時間に縛られず、また2倍速で視聴することも可能なので必要な学習時間を短縮できます。
お勧めの勉強方法
朝学習のすすめ
独学、Web通信講座、通学のどれを選ぶにしても学習時間をどう確保するのか?は共通の課題です。社会人であれば、自分でコントロールできる時間は1日の中でそれほど多くないはずです。
私も社会人になってから簿記の勉強をしましたので、時間の確保に苦労しました。残業や飲み会が入ると帰宅してからの時間はとれませんし、休みの日は子供の行事などがあると思うように進められずストレスがたまりました。
一つの解決策として、朝学習に切り替える方法があります。早く起きるハードルはありますが、起床時間は自分でコントロール可能ですし、「せっかく起きたのであれば」と勉強も進みます。早起きがつらい時期もありますが、1か月くらい続けると体も慣れてきます。
また、最近はフレックス出社を導入している会社も多いです。出社する時間を遅らせて、空いた時間を勉強に充てることができます。朝活という言葉も流行りましたが、「出社までの1時間」といった制約があると、学習が自然と効率化するメリットもあります。
スキマ時間の活用
まとまった学習時間の確保が難しい場合、スキマ時間を活用する方法があります。昼休みの10分、通勤の20分、お風呂から上がって一息ついている間など10分単位のスキマ時間は誰にでもあります。
問題を解くのは難しくても、薄い参考書を読み返す、関連するWebサイトの掲示板をみる、Web講座であれば細切れで良いのでスマホで講義を視聴するなどを行います。
一日に複数回、簿記の知識に触れることになりますので、記憶の定着率が上がります。
経理への転職はスキフルがおすすめ
スキフルは、経理を含む管理部門・士業事務所を専門に扱う転職エージェントです。簿記2級の資格を生かし、キャリアアップや転職を考えているのであればスキフルに相談することをお勧めします。
大手の求人サイトで、簿記2級の条件で検索すると数百件の求人情報がヒットします。自分が希望する条件、能力や適性を生かせる仕事内容を、限られた情報だけで判断するのは困難です。
転職エージェントは、募集している企業の詳しい情報や募集している具体的な仕事内容を把握しています。自分にあっている求人なのかを相談することができます。また応募書類の書き方や面接でのアドバイスも行ってくれるので、転職活動の心強いパートナーになってくれます。
転職では、やりがいも重要な項目ですが、同じくらい年収アップも重要です。スキフルは管理部門専門ですので、実務、資格を考慮したおおよその相場観を把握しています。スキフルが持つ情報を参考にしながら、キャリアに見合った年収の獲得を目指しましょう。
簿記2級はスキル、キャリアを伸ばすのに有効
簿記2級は、経理職のスキルアップ、キャリアアップはもちろん、営業職や管理職でも役に立つ資格です。またお金を管理する知識は、私生活でも様々に取り入れることが出来ます。
まれに「簿記2級は意味がない」といった記述を見かけますが、決してそのようなことはありません。
合格率は25%程度と簡単に合格できる資格ではないのですが、毎回6万人の受験者があり、1.5万人程度が合格しますので、簿記2級保有者が多く存在することは事実です。
保有者が多い=簡単に取れる資格=差別化にならない、といった考え方かもしれませんが、簿記2級で学ぶ事の有用性は合格者の数とは関係ありません。
転職市場でも十分評価される資格ですので、キャリアアップを考えている人にはお勧めの資格です。